米国内で初のBSE発生(発生の経過)


米国内で初のBSE発生

 ベネマン米国農務長官は2003年12月23日、同年12月9日にワシントン州内でと畜されたホルスタイン種の起立不能牛について、アイオワ州にある連邦政府の検査機関でBSEに関する検査をした結果、陽性であったことを発表した。この牛の脳のサンプル等は12月15日に国際獣疫事務局(OIE)が指定するイギリスの同定機関に送られ、本機関は専門家が同時に携行したサンプルとともに、いづれについても陽性との米国による診断を支持した。

 同時に同長官は、今回の検出は米国のサーベイランスや検出システムが機能していることを明確に示すものであるとするとともに、2003年10月に公表されたハーバード大危険性評価センターのリスク評価の中で、「既に講じられた安全対策等により、仮に米国内にBSE感染牛が導入されたとしてもまん延の可能性は低いとされている。」として安全を強調した。また、自らのクリスマスの夕食に牛肉を食する予定であるとした。

発生牛はカナダ産の可能性が濃厚

 発生牛は当初、発生農場の記録から4歳または4歳半とされたが、その後の疫学調査の結果、発生牛からと畜場で回収された金属製の耳標の番号と、2001年9月にカナダから輸入された牛のカナダ側の衛生検疫証明書に記録してあった番号が一致することが判明した。USDAおよびカナダ食品検査庁(CFIA)は共同で1月6日、生産農家の記録をもとに発生牛の父牛および娘牛のとのDNA鑑定を行った結果、ともに親子関係が認められたことから発生牛は97年4月にカナダのアルバータ州産で生産されたことが相当高い確率で証明されたと発表した。なお、発生牛の生産農場は、既に農場主の健康上の理由から廃業している。

牛発生牛の枝肉は市場に流通

 発生牛をと畜したと畜場で12月9日に生産された枝肉は、最終的にオレゴン州内の2つの食肉可能施設で挽肉等に加工され、主としてワシントン州およびオレゴン州に販売されていたことが判明した。食品安全検査局(FSIS)は、枝肉は脳をはじめとする特定危険部位(SRM)の多くが除外されていることから安全上の問題はないとしつつ、念のための措置として、当該食肉業者に発生牛由来の食肉を含む約4.5トンの食肉について自主的な回収を求める通知を行った。

 発生牛の脳はUSDAのサーベイランスのために採材されたが、小腸等のSRMについてはレンダリングに回されていた。このレンダリング製品についても、自主的な回収が行われている。

USDAは、SRMの食用としての流通禁止等の対策を発表

 ベネマン農務長官は12月30日、(1)SRMの食用としての流通禁止、(2)起立不能牛の食用としての流通禁止、(3)BSE検査を行っている牛の枝肉の移動制限、(4)と畜方法の改善、(5)先進的食肉回収システム(AMR)の規制強化、(6)機械的除肉により生産された肉の食用禁止、・個体識別に関する検討の推進−等の対策を発表した(詳細は次号にて解説)。また、昨年5月のカナダでのBSE発生に際しカナダ政府が招へいしたBSEの専門家4名を招き意見や勧告を求めることを発表した。米国が公表した対策は、今回招へいした専門家団が昨年6月にカナダ政府に対して行った勧告をほぼ先取りする形となっている。

発生牛の同居牛の淘汰を開始

 USDAは、1月5日および1月7日、発生牛の同居群としてその子牛を含む乳用種肥育牛450頭のうち258頭の淘汰を開始すると公表した。


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