●●●新規加盟国の主要乳製品の需給見通し●●●
本年5月1日に欧州連合(EU)に加盟した東欧諸国など10カ国における主要乳製品の需給に関する中期見通しによると、チーズは生産量、消費量ともに増加し、2010年の生産量は2003年と比較して14%増の80万トン、消費量は同25%増の100万トンとなり2004年以降は消費が生産を上回ると見込まれている。バターおよび脱脂粉乳の生産量は、EU拡大による生乳生産量の増加などから2004年には大きく増加するが、2005年以降毎年減少し2010年は2004年と比較してそれぞれ9%減の32万トンと14%減の22万2千トンと見込まれている。また、消費量は2003年と比較してバターが5%減の25万3千トン、脱脂粉乳が24%減の7万1千トンとともに減少が見込まれている。近年新規加盟国は、輸入特恵措置などからEUへの輸出が急増し、特に乳製品の輸出国として台頭してきたが、今後バターや脱脂粉乳からチーズなどの付加価値の高い製品への生産シフトが見込まれている。
●●●新規加盟国の乳用経産牛飼養頭数はポーランドが最大●●●
新規加盟国の乳用経産牛の飼養動向をみると、2002年の新規加盟国の乳用経産牛飼養頭数は484万6千頭で、国別ではポーランドが285万1千頭と最も多く、次いでチェコの48万1千頭となっている。酪農家1戸当たりの飼養頭数は新規加盟国全体の平均では3頭と少なく、国別にみるとチェコが1戸当たりEU15カ国平均の約5倍に当たる140頭と最も多いものの、最大飼養頭数のポーランドでは1戸当たり2頭と小規模な酪農家が目立っている。
また、2000年の新規加盟国全体での酪農家数は約160万戸と、同時期におけるEU15ヵ国の2倍以上となっている。国別にみると、ポーランドが120万戸と全体の約75%を占めている。しかし、ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、ポーランドで乳業メーカーへ出荷した実績のある酪農家は2002年で38万戸となっており、このような小規模酪農家を中心とした酪農構造がクオータ制度の導入を遅らせる要因になるとみている。
●●●酪農構造の変革が加速●●●
また主要国における1頭当たりの年間搾乳量をみると、ハンガリーとチェコの約5,500キログラムに対し、スロベニアでは約3,000キログラムと各国により飼養管理技術などに大きな差があるとみられる。ZMPでは、新規加盟国の小規模農家を中心とした酪農構造は、今後(1)EU拡大後の経済成長による農業以外の産業の発展に伴う農業人口(労働力)の減少(2)EUの厳しい衛生基準に適合するための設備投資の必要性などから規模拡大または廃業の選択を強いられる─などから変革が加速すると見込んでいる。
新規加盟国における乳用経産牛飼養動向
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資料:ZMP、欧州委員会、Eurostat等
注:酪農家戸数、1戸当たり飼養頭数は2000年、1頭当たり搾乳量は2001年、乳用経産牛飼養頭数は2002年の数値 |
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