特別レポート

豪州の牛肉、酪農の需給予測
〜ABARE農業資源観測会議2004より〜

調査情報部 調査情報第1課
1.はじめに

会場の入口は多数の参加者で埋めつくされた

 豪州では、連邦政府の農林漁業省豪州農業資源経済局(ABARE)が毎年3月上旬に「農業資源観測会議」を開催している。穀物や肉牛、酪農といった主要な第一次産業の短・中期的な(2008/09年度まで:年度は7月〜翌年6月)需給予測を発表するほか、その時々のトピックスを取り上げ、各分野の専門家による分析、提言、パネルディスカッションが行われる。

 ここでは、今年3月2日と3日に豪州の首都キャンベラにおいて開催された第34回目となる「農業資源観測会議2004」で示された需給見通しの中から主要な畜産物についてその概要を紹介する。



2.各セッションでの分析報告

(1)牛肉

(1) 肉牛飼養頭数は2003/04年度以降、一貫して増加

  2002年から続いた干ばつは豪州の肉牛飼養頭数の著しい減少をもたらした。生産者の牛群再構築への取り組みは短期ではあるものの、牛肉の生産を制限することになる。豪州における牛飼養頭数は、干ばつの影響により2002/03年度は前年度より4.9%減少した。2003/04年度に入り、干ばつは終息を迎えつつあるが、一部の地域では干ばつの影響が続いていることから2003/04年度も飼養頭数が伸び悩むと見込まれる。しかし、2004/05年度以降は順調に増加し、その後数年間で干ばつ前の飼養頭数にまで回復するとみられている。2007/08年度には牛飼養頭数は2,820万頭となり、このうち肉用牛は2,500万頭に達すると予測している。

表1 牛肉の需給動向予測
資料:ABARE「OUTLOOK2004」
注1:名目とは各年度で実際に取引される価格
 2:実質とは基準年(2003/04年)の物価を基準として評価した価格。2003/04年度の豪ドルを基に算出
 3:3月31日時点
 4:船積みベース
 5:2003/04年度以降はABAREによる算出


(2) 枝肉生産量、2003/04年度は減少

  2002/03年度の枝肉生産量は干ばつによりと畜が増加したため、前年度より7.2%増加の922万8,000頭となった。しかし、2003/04年度は生産者が縮小した牛群を再構築させるため牛の保留を行うとみていることから、2003/04年度のと畜頭数は前年度より10.8%減少し832万5,000頭と予測している。その後、と畜頭数は一貫して増加し、これに伴って枝肉生産量も増加するとみている。

(3) 家畜市場取引価格は2004/05年度以降伸び悩み

  家畜市場取引価格は、2003/04年度においては牛の保留が進むため需要が強まることから、堅調に推移するとみており、同年度の家畜市場取引価格(実質)は、前年度比13%高のキログラム当たり297豪セント(約241円:1豪ドル=81円)と予測している。しかし、2004/05年度以降の取引価格は、飼養頭数が回復し始めることから軟調に推移するとみている。

  また、豪州国内の牛肉消費量は、2002/03年度は1人1年当たり37.1キログラムと前年度より5.4%増加したものの2003/04年度以降は35.4キログラム前後で推移するとみている。

(4) 牛肉輸出量は増加傾向で推移

  豪州における牛肉輸出量は、2002/03年度には干ばつによる生産量の減少から90万2,000トン(船積みベース)となったが、2003/04年度以降は生産量が増加することから輸出量も増加すると予測している。2008/09年度には99万7,000トンと約100万トン近くになると見込んでおり、2003/04年度と比べると2割強の増加となる。

  また、これらを輸出先別にみると、最大の輸出先である米国向けや輸出相手国第3位である韓国向けは2003/04年度以降、ともに増加傾向で推移するとみている。

(5) 日本向けは米国産輸入解禁時期がカギ

  2003年12月に米国のBSE発生により日本は米国からの牛肉輸入を停止したため、その代替として豪州産の牛肉輸出量が増え2003/04年度は前年度より8.3%増の30万トンと予測している。ただし、2004/05年度はいつ米国産牛肉の輸入停止措置が解禁されるかによるが、日本で牛肉の関税緊急措置が再び発動されると見込んでいることから日本向けは29万トンと前年度よりやや減少するとみている。なお、ABAREでは米国産牛肉の輸入停止措置は長期にはわたらないとみている。

(6) 生体牛輸出は増加

  牛の生体輸出は、2003/04年度は豪ドル高の影響により主要輸出相手国からの需要が弱まり前年度より29.1%減少し75万頭になるとみている。しかし、その後は豪ドルが弱まるとみていることから2004/05年度以降は増加傾向で推移し、2008/09年度には102万頭に達するとみている。


(2)牛乳乳製品


(1) 2004/05年度以降、生乳生産量は増加傾向と予測

  豪州の乳用牛飼養頭数は、干ばつの影響により2003/04年度は205万頭と前年度並みとなるものの、2004/05年度以降は干ばつの終息から飼養頭数は徐々に回復に向かうと見込んでいる。また、1頭当たりの乳量は、2003/04年度では、一部の地域で依然として干ばつの影響を受けていることから前年度を下回るものの、2004/05年度以降、微増で推移するものと見込んでいる。したがって中期的な豪州の生乳生産量は、2004/05年度以降は増加すると予測し、2008/09年度には108億3,800万リットルと2003/04年度と比べ5.5%増加すると予測している。

(2) チーズが輸出のけん引役

  豪州では生乳生産量の約2割が国内向けの飲用牛乳として消費されているが、ここ最近は飲用の消費は伸び悩んでおり、飲用販売量は2003/04年度以降横ばいで推移すると見ている。このため、加工向けに回る生乳が年々増加することとなる。

  2003/04年度においては、生乳生産量の減少と国内の飲用消費量の増加により加工向け生乳処理量は、前年度より0.8%減少し83億3,900万リットルと予測している。豪州で生産される乳製品の中で最も多いのがチーズ、次いで粉乳、バターとなっている。特にチーズは、他の乳製品と比べ、国際価格が比較的高い水準で推移することからチーズ生産に傾注すると予測している。したがって、チーズは豪州の乳製品輸出を左右する品目であるといえる。

  また、今後乳製品生産量の増加から輸出量が増え、海外市場への依存度はますます強くなるとみている。2003/04年度の乳製品の総輸出額(実質)は、前年度より大幅減の18億7,400万豪ドル(約1,518億円)と見込んでいるが、その後は輸出量とともに増加し2008/09年度には2003/04年度と比較して20.4%増の22億5,600万豪ドル(約1,827億円)となると予測している。

表2 豪州の乳製品需給予測
資料:ABARE「OUTLOOK2004」
注1:名目とは各年度で実際に取引される価格
 2:実質とは基準年(2003/04年)の物価を基準として評価した価格。2003/04年度の豪ドルを基に算出
 3:3月31日時点
 4:2003/04年度以降はABAREによる算出


(3)期待を寄せる豪−米国間の自由貿易協定(FTA)

 「酪農乳業界の挑戦(Challenges for the Dairy Industry)」と題して豪州酪農乳業界の代表として壇上で提言した、ディリー・オーストラリアのMike Ginivan氏は、業界の成長と繁栄のためだけではなく競争に打ち勝つためにも数々の課題に立ち向かっていかなければならないことを力説した。その課題には、最近まで豪州を襲った干ばつから短期で回復することをはじめ、新たな市場の開拓や新商品の開発などを挙げた。 

 昨年12月に豪−米国間でFTA協定が締結され、これにより米国側では豪州産乳製品の無税関税枠が拡大された。同氏は、現在、米国市場への乳製品輸出額は1億3,500万豪ドル(約109億円)であるが、FTA協定締結後は5億豪ドル(約405億円)近くまで拡大する可能性があるとし、米国との FTA協定締結は非常に重要な意味があると述べた。また、米国の乳製品市場は1,200億豪ドル(約9億7,200万円)以上の規模があるとみており、それからみれば豪州産乳製品が占める割合はわずか0.4%にしかならないが、豪州の酪農家には恩恵をもたらし、乳製品輸出業者には米国の乳製品市場に参入する機会が増えることになるだろうと今後の効果に期待を寄せた。



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