牛肉の消費回復によりEUの牛肉介入在庫量ゼロに


欧州委、介入在庫量ゼロを発表

 欧州委員会は3月26日、EUの牛肉介入在庫がまもなくゼロになることを発表した。

 EUでは、2000年末の牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃により、牛肉価格が著しく下落したため、牛肉価格の回復を目的として、2000年12月から牛肉の介入買い入れの実施を決定した。この買い入れによる在庫量は、2001年末に最大となる26万トンとなった。2002年当初からEU域内の牛肉市場が好転したことから、2002年6月以降、介入在庫からの牛肉の売却が行われていた。欧州委員会は、介入在庫からの売却が、当初同委員会が予想していたよりも早く完了したと伝えている。


牛肉価格安定のため実施

 EUでは、域内の牛肉価格が下落した場合、加盟各国の介入機関を通じて、一定基準を満たす牛肉を買い入れ、市場から隔離することにより、価格を一定以上に維持する介入買い入れ制度があった。この制度は、アジェンダ2000による共通農業政策(CAP)改革により、2002年6月30日をもって廃止され、同年7月1日以降、民間在庫補助(APS)に移行したが、2002年当初から、牛肉価格は安定しているため、牛肉のAPS発動は実施されていない。


牛肉消費量が回復

 欧州委員会農業総局が発表した、農業分野の中期予測によると、2002年のEU15カ国での牛肉の1人当たり消費量は、前年比10.8%増の19.7キログラム、2003年は、同2.6%増の20.8キログラムになるとしている。2003年の消費量は、BSE問題再燃前の99年(20.4キログラム)をも上回るものとなり、EUでの牛肉の消費は回復している。今回の介入在庫の放出も、この牛肉消費の回復が要因であるとも伝えている。

 このように、現在のEU15カ国の牛肉消費量は回復しているが、EU15カ国での牛肉生産量は低下している。今まで牛肉の自給率が100%を超えていたEUも、今後は牛肉の純輸入国となることが見込まれている。


◎EU、米国およびカナダ産家きん肉等の輸入に地域区分を導入

 EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は3月30日、米国およびカナダからEUへの生きた家きん、家きん肉、卵などの輸入の一時停止措置を、発生のあった地域に限定する欧州委員会の提案を承認した。

 米国衛生当局は、EUに対し、米国における鳥インフルエンザの発生状況と対策状況について情報提供するとともに、今回の発生は地域が特定されているものであることから、輸入の一時停止措置などの対象地域とこれ以外の地域を区分する、地域主義(regionalization)の導入を要望していた(海外駐在員情報平成16年3月30日(通巻619号)参照)。同常設委員会での検討の結果、地域主義の導入が決定し、米国からの生きた家きん、家きん肉、卵などの輸入の一時停止措置は、テキサス州産のものだけに限定され、この措置は、8月23日まで継続される。

 また、同様に、カナダからの生きた家きん、家きん肉、卵などの輸入の一時停止措置についても、発生のあったブリテッシュコロンビア州産のものだけに限定され、この措置は、10月1日まで継続される。

 なお、当該措置については、両国での鳥インフルエンザの発生状況を評価しながら見直していくこととしている。


元のページに戻る