欧州委、2010年までの農業見通しを公表


豚肉、チーズなどの生産が拡大すると予測

 欧州委員会は3月23日、2003年から2010年における欧州連合(EU)の農産物の需給に関する中期見通しの報告書を公表した。報告書では、この期間において生産が消費に追いつかないことから、牛肉の価格が上昇すること、新規加盟国(AC10)での経済が発展することなどから、豚肉や鶏肉の消費、生産がともに拡大すると見通している。また、共通農業政策(CAP)改革により、介入価格が引き下げられることなどを踏まえ、バターや脱脂粉乳から、チーズなどの付加価値の高い製品への生産シフトに向けたEUにおける乳業の再編が加速するとも見通している。

 この報告書は、2003年11月時点で入手可能な統計情報を基に見通しを行ったものであり、また、EU農相理事会で2003年6月に合意されたCAP改革などを考慮に入れたものである。


主な畜産物に関する見通し

 主な畜産物の需給に関する見通しは以下の通り。

(1) 牛肉:牛海綿状脳症(BSE)問題により減少した現在の加盟国(EU15)における牛肉の消費はすでにほぼ回復。一方、生産は比較的低水準で推移しているため、2003年には、過去20数年来で初めて、消費量が生産量を上回り、純輸入市場となったと予測。このような状況は、2010年まで継続。一方、AC10では、生産量が消費量を上回って推移。この結果、拡大後の加盟国(EU25)全体では、2005年以降毎年20万トンの牛肉を域外から輸入。

(2) 豚肉:生産は、EU15では一貫して拡大する(2003年;1,790万トン→2010年:1,910万トン)が、AC10では豚の能力(肉質、飼料効率の低さなど)の点でEU15のものと比べ劣るため、加盟直後の2004年および2005年には、生産が減少(2003年:350万トン→2004年:320万トン、2005年340万トン)するが、2006年以降拡大(2010年:390万トン)。

  一方、消費については、EU25全体で拡大すると見通しているが、とりわけAC10においては、2010年には2003年に比べ17%拡大。この結果、EU25全体における豚肉の消費は拡大するものの、それ以上に生産が拡大することから、EU25全体での輸出可能量は2003年の110万トンから2010年の140万トンに拡大。

(3) 鶏肉:生産は、EU15、AC10ともに拡大し、特にAC10では2010年には2003年に比べ50%拡大。消費は、EC15では15%、AC10では29%拡大。この結果、EU25全体での輸出可能数量は2010年には40万トンと2003年の57%の水準に減少。なお、AC10における生産の拡大は、AC10以外の国の企業による投資などによる。

(4) 乳製品:チーズの生産と消費の拡大、バターと脱脂粉乳の生産の減少を通じ、徐々に需給情勢は改善されると予測。

  チーズの生産および消費は、EU15、AC10ともに拡大するが、とりわけAC10での消費は、2010年には2003年に比べ25%拡大。

  バターは、EU15において、消費が拡大するものの生産が減少(2003年:186万6,600トン→2010年:166万5,100トン)することから、EU25では2006年以降、消費が生産を上回る。

  脱脂粉乳は、消費はEU15、AC10ともに減少するものの、それ以上にEU15での生産が大きく減少することから、EU25全体でも生産は大きく(2003年:126万4千トン→2010年:79万7,700トン)減少し、EU25としては2009年から消費が生産を上回る。


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