豪州牛肉業界、販売促進活動と財源運用の見直しに着手


検討委員会が初会合

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は4月8日、牛肉業界の販売促進戦略の再検討やMLAの牛肉販売促進活動に要する財源のあり方を勧告するために設置された牛肉産業資金供給検討委員会(Beef Industry Funding Steering Committee)が初会合を開催したことを発表した。

 これは、昨年10月に開催された食肉業界の戦略会議において、将来的な牛肉産業の販売促進と市場開発の活動に適切な財源を確保するためには、市場販売促進戦略と事業の見直しが必要であるとの議論を踏まえ、その検討のために委員会の設置が同意されていたものである。

 この委員会は、豪州肉牛協議会(CCA)、豪州フィードロット協会(ALFA)、豪州食肉産業協議会(AMIC)それぞれの代表者や生産者、MLA会長など計10名で構成されている。


販売促進事業と財源問題の検討が主眼

 この委員会のマクドナルド議長(クインズランド州の生産者)は、現在の前例がない市場環境の変動の背景について、豪州の主要な輸出市場における牛海綿状脳症(BSE)問題、鳥インフルエンザなど疾病の消費に対する影響、豪ドル高の継続、南米産牛肉の輸出増などの問題を挙げ、これらの問題を考慮に入れ対応できるよう検討するとしている。加えて、「これらの変動要因は真の脅威を引き起こす場合があると同時に、豪州の牛肉産業に絶好の機会を提供する場合もある」と市場環境の変動に対する適応力の向上も視野に入れる方針を示した。

 同議長によれば、この委員会の検討すべき重要な事項は、(1)現在の販売促進事業の構成が妥当か否か、あるいは(2)牛肉産業のより長期にわたる利益を確保するためには追加の取り組みが特定の市場で必要か否か−を決定することであり、(3)追加の財源が必要とされる場合、その調達方法や資金規模、使途についても勧告することとなるとしている。

 追加の財源調達には方法として第一に肉牛取引課徴金(現行:1頭当たり3.5豪ドル(約280円:1豪ドル=80円))の値上げが想定されるが、課徴金の変更については、納付者である生産者が最終的な決定権を持っているため、同議長は、委員会が追加財源の必要性を勧告する場合、透明性が担保される実行手順などを提案する可能性についても言及している。


背景には継続する課徴金値上げ問題も

 MLAの市場活動の財源である肉牛取引課徴金については、販売促進活動の強化を目指し2002年におけるMLAの年次総会で値上げが提案されたが、当時、干ばつが拡大する状況下にあり否決された。その後、昨年、CCAが行ったMLAの事業評価において、MLAの販売促進活動は総じて効果的と評価された中で、対日販売促進活動の強化の必要性が強調されたものの、MLAの2003/04年度予算において財源不足から販売促進費が前年度から1割以上減少した経緯がある。

 現状の国際牛肉市場の混とんとした状況下、課徴金の値上げ論議はまだ現実的なものにはなっていないが、報道によれば、CCAのアダムス理事長やMLAのクロンビー会長は今後の財源確保のために課徴金値上げの必要性を示唆する発言を行っている。また、生産者の中にも、家畜販売額に占める割合が肉牛の課徴金(0.3%程度)は羊(2%程度)や豚(1.5%程度)の課徴金に比べて低いことから、業界の将来のためには値上げを検討するべきではないかとの意見もあるようだ。

 なお、この委員会の報告は今年6月までに取りまとめられる予定であるが、議長の発言内容から推察すると、課徴金の取り扱いにも言及した内容となることも予想される。


◎NZ、中国とFTA交渉開始に向け実質合意

 ニュージーランド(NZ)のクラーク首相とサットン貿易交渉相は4月14日、NZと中国が貿易・経済協力枠組み(TECF)に合意したことを発表した。TECFの重要な事項として両国の自由貿易協定(FTA)交渉の開始がうたわれおり、6月にTECFが正式に調印されれば、今年末まで両国でFTAの共同研究が実施され、年明けから本格的な交渉に入ることになる。


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