連邦政府、生体家畜輸出規制の改革案を発表  ● 豪 州


豪州南部の港から、冬期の生体家畜出荷可能に

 連邦政府トラス農相は3月30日、生体家畜輸出規制の改革案を発表した。この改革案は、今年1月初めに生体家畜輸出問題を検討する委員会からの生体家畜輸出規制の見直しに関する勧告「ケニリーレポート」を受けてなされたものである。改革案の内容は、おおむね勧告に沿ったものとなっているが、いくつかの点で重要な修正が行われている。連邦政府による生体家畜輸出規制の規則制定や輸出業者に対する輸出許可権限の政府への一元化、豪州検疫検査局(AQIS)による検査、監視の強化などは勧告のとおり改革案に盛り込まれたが、勧告で禁止されていた冬季の豪州南部の港からの出荷は、条件付きで認められた。

 また、勧告内容の一部は既に実施または実施に向け行動に移されている。昨年12月以来、すべての中東向け生体家畜輸出船舶に、獣医師が乗船して家畜の健康状態や動物福祉に関する日々の記録をAQISに報告している。さらに、陸揚げ拒否された家畜の一時的な陸揚げ施設の建設などについて、現在、中東諸国に連邦政府の代表を派遣し、この問題に関する覚書締結に向け交渉中である。なお、サウジアラビアへの輸出は、豪州とサウジアラビア両政府間で検疫などの条件が合意されていないため、依然、再開されていない。

 生体家畜の輸出額は、年間10億豪ドル(800億円;1ドル=80円)に上り豪州にとって重要な産業となっているが、トラス農相は、「豪州社会が望む動物福祉や家畜の品質に関する厳しい基準を満たす責任を産業界は負わなければならない」と述べ、業界に対し厳しい対応を迫るとともに、この改革によって、中東諸国など輸入国側からの家畜の受入拒否や許容範囲を超えるような船上での家畜の死亡例は極めて少なくなるとしている。


勧告の修正内容

 改革案のうち、勧告に修正を加えた内容は次の通り。(なお、勧告内容の概要は本誌通巻第609号参照)

(1) 地域経済に与える影響の大きさを考慮し、フィードロット施設の改良や良質な家畜の選定、暑熱対策の改善、フィードロットでの家畜検査時間の延長を条件に、冬季期間中でもポートランドやアデレードなどの豪州南部の港からの出荷を認める。許容範囲内まで家畜の死亡数が減少しなければ出荷停止となる。

(2) 中東向け船舶に獣医師の乗船が義務付けられる。その他の国向けの船舶には危険度を判断して配置される。勧告では10日以上を要する家畜の輸送(それ以外についても全体の10%)には必ず獣医師の乗船を義務付けていたが適格な獣医師不足で再考された。

(3) 輸出業者は、AQISが指定する資格要件を満たした獣医師と契約する。勧告では、獣医師はAQISから派遣されることとなっていた。獣医師はその業務についてAQISに直接報告義務を負うことは同様。

(4) 連邦政府は、生体家畜輸入国での動物福祉に基づく家畜の取り扱いの改善などについて産業界の取り組みに対し4年間で400万豪ドル(3億2千万円)を支援する。

  なお、生体家畜輸出規則の制定については、2004年5月の第一次産業大臣会議に草案を提出し、2004年末までの制定を目途としている。


食肉生産者団体、連邦政府案を歓迎

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は3月31日、この改革案により、生体家畜輸出産業を動物福祉に配慮したものに改善できると歓迎の意向を表明した。MLAでは、連邦政府が発表した400万豪ドルの財政支援処置が、MLAとライブコープが共同で行ってきた中東における生体家畜輸出の動物福祉に関連する共同プログラムを支援することになると述べている。


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