家畜疾病対策が急務            ● カンボジア


家畜疾病対策が急務

 カンボジアでは従来、獣医師や医薬品の不足により、伝染病による家畜の死亡率が高いことが問題となっている。一方同国政府は予算不足からその財源の多くを第三国、国際機関および非政府機関(NGO)からの援助に頼っているのが現状で、国際農業開発基金(IFAD)や世界銀行による農業生産性改善計画(APIP)の融資事業により、獣医師不足を補うためのいわゆる「農村獣医」と呼ばれる家畜衛生を実践する人材を育成し、農村部における家畜疾病・衛生対策の強化に努めている。同国農林水産省家畜生産・衛生局が2月20日付けで公表したIFADによる融資事業の2003年報告書によると、全国約1万4千の市町村に対し農村獣医数は5,852人、うちNGOの協力によるものが4,172人となっている。APIPによって養成された農村獣医は特定地方に集中しており、今後の課題としては地方格差を解消し、全国で6,300人程度人材を確保することが目標に挙げられている。

 また、同報告書によると、2003年の口蹄疫発生状況は牛3,123頭、水牛528頭、豚351頭とされ、うち牛26頭、豚5頭がへい死したとされている。

 同じく出血性敗血症の発生状況は牛615頭、水牛401頭、豚361頭とされ、うち牛120頭、水牛125頭、豚23頭がへい死したとされている。


統計システムの整備が課題

 なお、3月中旬に開催された農林水産省家畜生産・衛生局の年次会議において報告された2003年の同国家畜飼養頭数は牛が298万5千頭で、うち役用131万1千頭、繁殖用77万1千頭、全体で対前年比2.1%の増加、水牛が66万1千頭うち役用37万4千頭、繁殖用20万4千頭、全体で5.8%増加、豚が同2.1%増の230万頭、家きん1,600万羽とされている。ただし、同国の家畜飼養頭数統計は実頭数調査された数字を中央政府が再度集計公表するものであるため、集計段階で推計、修正が加えられ、必ずしも実態に即したものとは言えないものとなっている。

 同国では主に役畜として使用されている牛は、価格が安価なため相当数隣国のタイへ食肉仕向けで輸出されており、機械化の進んでいない同国における農業生産性への影響が懸念されている。


国境防疫の機能不全

 カンボジアが位置するインドシナ半島では多くの国が隣国と接している。同国は3カ国と国境を接しており、国境に設置された動物検疫所ではわいろの横行、検疫官の頻繁な不在などにより正規に動物検疫を受け、中央政府に報告されるものは少ないため、隣国との生体、あるいは加工製品の輸出入数量の正確な把握が困難な状況にある。また、このような理由により半島全域にまん延する口蹄疫の清浄化対策は遅々として進んでいない。


◎鳥インフルエンザの発生による影響

 同国政府は、今年1月23日に同国プノンペン市郊外で鳥インフルエンザの発生が確認されたとした。

 同国の動物性たんぱく質の摂取は、値段の安い淡水魚が最も多く、畜産物では豚肉に対する需要が比較的高い。

 農水省統計計画部発表による鳥インフルエンザの影響調査では、プノンペン市内3市場の平均生体豚卸売価格で2003年12月が1キログラム当たり3,470リエル(94円:1,000リエル=27円)に対し翌1月では3,580リエル(97円)と、平均価格上昇率は3.5%の値上がりが見られた。

 鳥インフルエンザ発生前と発生後の2月の平均小売価格の比較では、プノンペン市内では鶏肉小売価格は4%下落したのに対し、牛肉、豚肉、魚はそれぞれ25%、5%、3%上昇し、特に牛肉の値上がりが著しかった。

 また、同じく発生前と2月時点のプノンペン市内主要3市場における家きん肉取引状況を比較した場合は、取り扱い店舗数が54店から10店へ、3市場の1日当たり総取引量は3,990キログラムから70キログラムまで著しく減少した。


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