6年ぶりにGM作物認可へ
欧州委員会の委員による会合は1月28日、遺伝子組み換え(GM)作物の今後の方向性に関する検討会(orientation debate)を開催し、新規認可の申請があるGMスイートコーン(Bt11)のEU域内での流通を認可する欧州委員会の提案を承認した。この件について2月に開催される農相理事会で承認されると、98年10月以来6年ぶりにEUでGM作物が認可されることになる。
EUでは、GM作物を含む新たな食品およびそれが原料として使用されている食品がEUの市場に参入する場合は、あらかじめ欧州委員会の認可が必要となっている(EC/258/97)。今回検討が行われたBt11は、スイスの種子メーカーであるシンジェンタ(Syngenta)社が販売の権利を持つGMスイートコーンであり、オランダの主管官庁が99年2月に欧州委員会に認可を申請していた。
新たなGM作物に関する規則を作成、審査再開
欧州では、98年10月以降GM作物について安全性に疑問があるとして、新規認可を凍結していた。そこで欧州委員会は承認再開に向け、GM作物の表示に関する2つの規則(GM作物由来の食品および飼料の市場での表示)を作成した(詳細は、「畜産の情報
海外編」2003年9月号参照)。
新規則承認後、欧州委員会は今まで申請があったGM作物の審査を再開した。EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は2003年12月8日、申請があった中でも審査が最も進んだ段階にあったBt11のEU域内での流通を認可するとした、欧州委員会の提案について検討を行った。しかし、この件について特定多数決(注)で採択とならなかった。これは、フランスなどの加盟国が、科学的な問題について適切な評価が提出されていないとして反対したためであった。票決では、3カ国が棄権(25票)、6カ国が賛成(33票)、6カ国が反対(29票)であった。
(注):特定多数決方式とは、各国別に異なる票数(合計87票)が与えられ、欧州委員会の提案事項については、62票の賛成が必要とされている。
コミッショナーによる会合でGM作物の今後を検討
EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会などの各種の常設委員会による採決方法は、特定多数決で実施し、欧州委員会の意見は常設委員会の賛成なしには決定とならない。しかし、常設委員会で特に意見なし、または反対意見が付された場合、欧州委員会の意見は直ちに農相理事会に送付されることとなっている。なお、農相理事会は、欧州委員会の提案を特定多数などで承認するか、単純多数で否決することとなるが、一定期間内に採決を行わない場合は欧州委員会の提案が承認されたこととなる。
今回の欧州委員会の委員による会合は、農相理事会に送付する前に、委員によりGM作物の今後の方向性を検討することが好ましいという内部での提案があり、実現したと報道されている。
この会合では、(1)申請が出されているBt11スイートコーンのEU域内での流通を認可する欧州委員会の提案を承認すること(2)審査段階が進んでいるGMトウモロコシ(NK603)の輸入と加工について、2月の常設委員会に提案すること−が決定となった。この会合の位置付けは、EUの規則制定手続きにおいて、明確には規定されていないが、欧州委員の会合による決定だけに、今後の規則制定手続きに多大な影響を及ぼすとみられている。
なお、欧州委員会が提案したBt11スイートコーンに関する決定案によると、この決定が適用される日は、昨年施行されたGM作物の表示に関する規則が適用される日の2004年4月19日となっている。
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