鳥インフルエンザに対する豪州の対応


隣国の発生で警戒強まる

 鳥インフルエンザの発生がアジア10カ国に拡大する中、豪州でも同病に対する警戒を強めている。

 豪州において同病は、最も直近ではニューサウスウェールズ州タムワースで1997年、そのほかビクトリア州で1976年、1985年、1992年の3回、クインズランド州で1994年の計5回発生しているが、すべて撲滅しており、人間への感染例はない。豪州の鶏肉や鳥類の検疫は厳しく、一部調理済み製品を除き原則として生鮮鶏肉や生きた鳥類の輸入を認めていない。

 しかし、隣国であるインドネシアでの発生が確認されたことから、発生リスクが高まったと認識されており、豪州検疫検査局(AQIS)は「警戒強化」を呼びかけている。

農相は過度な不安は不要と

 このような中、連邦政府のトラス農相は1月29日、次のような声明を発表した。

(1) 豪州の検疫や家畜衛生の機関は、最初の発生が報告されて以来、この状況を監視しており、一層の検疫体制の強化を図るため、AQISはリスクの高い国々からのすべての航空便の渡航者や荷物をスクリーニングしている。
(2) 豪州国民は鳥インフルエンザに過度に不安になる必要はないが、この病気がアジアで広がっており、豪州で起きるリスクは継続していることに注意する必要性がある。
(3) 水鳥や海鳥などの渡り鳥が豪州に鳥インフルエンザ・ウイルスを運んでくる可能性もあることから、養鶏業者は野鳥が鶏に接触しないよう注意する必要がある。
 また、同農相は、「連邦政府は業界とともにウイルスから商業鶏を守るための優れたバイオセキュリティーの方法を生産者が確保するよう緊密に取り組んできた」とした上で、次のように強調した。
(4) 豪州の食鳥・鶏卵業界は、アジアにおける鳥インフルエンザの報告に十分な注意を払っており、業界のバイオセキュリティ−の取り決めは、商業鶏を水鳥のような野鳥から隔離するように設計されている。
(5) 商業養鶏農場のバイオセキュリティー・システムは、ここ数年におけるニューカッスル病のような疾病発生時への対応を通じて強化された。

 以上から、同農相は、「この病気が急激に広がっていることで、豪州にもそのリスクが迫っているが、豪州は病気の侵入を防御するだけでなく、国内で発見された場合でも効果的に対応する準備は十分整っている」と万全の体制で対応する構えを見せている。

豪州産鶏肉の生産には限界が

 一方、報道によれば、鳥インフルエンザ発生によるタイ産、中国産鶏肉の輸入停止措置を受け、豪州産鶏肉に対するアジア諸国からの問い合わせが増えているとされている。

 豪州の鶏肉生産量は年間70万トン前後、輸出量はわずか数%程度と、国内消費向けが大部分を占め、豪州の農畜産業の中では珍しい国内完結型である。業界では、生産能力にも限界があることや好調な国内消費動向から、今回の同病の発生はかつてのアジア各国での豚の疾病を背景として増加した豚肉輸出のようにはならないとみている。


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