タイで鳥インフルエンザが発生


 タイは中国に次ぐ日本への鶏肉および鶏肉調製品の輸出国(2002年度)であるが、同国で鳥インフルエンザ(H5N1型)が発生した。

発生確認までの経過

 タイ中部における多数の鶏の病死に関しては、2003年の11月中ごろから報告され、農業協同組合省畜産開発局の説明では、冬への気候の変わり目に発生した鳥コレラが主な原因で、小規模生産者が鶏の死骸を河川や用水に捨てたため、採卵鶏農場に拡大したというものであった。

 しかしながら、説明に不信感を持った消費者団体が死亡原因は鳥インフルエンザであり、政府は事実を隠ぺいしようとしていると訴え、大きな問題となった。

 これに対して農業協同組合相は、1月16日、関係機関に検査の実施と防疫体制の整備を命じるとともに、タイ中部で約35万羽の処分を行ったことを発表した。また、同19日には、訪問中のEU保健担当委員が「タイで鳥インフルエンザの証拠は確認できなかった」旨の発表した他、農業協同組合相が鶏の移動の緩和措置を発表し、事態は収拾に向うかに見えた。

 その後、同22日、日本政府がタイ産家きん肉等の一時輸入停止措置を発表した。23日、公衆衛生省は、鳥インフルエンザの患者2名が確認されたことを発表し、これまでの処分羽数が700万羽になることも明らかになった。これを受け、EU等も同国からの鶏肉輸入を停止した。

タイ政府の対応

 一方、タイのタクシン首相は1月24日、今回の鳥インフルエンザの発生に関して、(1)隠ぺいを意図したことはない(2)25日に被害の大きいスパンブリ県に閣僚とともに出向き生産者に会う(3)2〜3日で事態を政府のコントロール下に置く(4)関係国による鳥インフルエンザ国際会議を28日に開催する(5)鶏肉輸出は輸出産業全体に占める割合が小さく、経済全体への影響は小さい−と説明した。

 同様にソムキット副首相は、3カ月で事態を改善するとして、(1)全国の養鶏地域での検査の実施と感染鶏等を処分(2)混乱収拾のためのキャンペーンの実施と医療機関の体制整備(3)加熱済み製品を輸出するため輸入国と交渉を行う−と説明した。

 また、今回の事態を重く見た、野党である民主党は首相を含めた3人の閣僚の責任問題とし辞任を要求している。

今後の見通し

 今回の経済への影響に関して、保険会社のエコノミストは、鶏肉輸出はタイの全輸出の1.3%に過ぎず、経済成長率を0.5%程度下げるとしている。また財務省も経済成長率が0.1%、輸出が0.4%、それぞれマイナスになるとしている。いずれも輸出に与える影響を中心に推計したものである。

 これに対し、鶏肉輸出企業の担当者の輸出再開までの見通しは、前回、中国での鳥インフルエンザが確認され、日本に3カ月間中国産鶏肉の輸入が停止されたが、この場合は輸出向け製品を国内市場に仕向けることで工場の稼動を継続できた。一方、タイの場合には、国内市場が小さく、過剰な製品を吸収できないので、工場の稼動を中止せざるを得ず、このことはブロイラーの生産まで波及し、いったん輸出を停止した場合には、再開までには少なくとも1年はかかるとしている。

 また、タイのメディアも、今回の発生により、観光等、他の分野にも大きな影響が予想され、その影響は単に鶏肉産業のみに限定されないとしている。

ベトナム、カンボジアでも発生

 1月19日、世界保健機構(WHO)は、ベトナムのハノイで鳥インフルエンザによる5人目の死亡を確認したと発表した。同国から日本への食鳥の輸入量は、2002年の実績でアヒルの肉等が200トン弱となっており、日本の鶏肉需給への直接的影響は小さいと考えられる。

 また、23日にはカンボジアでの発生が確認されたが、近年の日本の同国からの家きん製品の輸入実績はない。


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