広がる鳥インフルエンザの影響         ● タ イ


 1月23日にタイ政府によって発生が確認された鳥インフルエンザは、各方面に影響を与えている。

鶏肉製品のシップバックと保管

 タイのバンコクの港湾関係者の話では、今回の鳥インフルエンザの発生により、主要輸入国である日本とEUがタイ産鶏肉製品の輸入停止を決定したため、約1,000個のコンテナーがシップバックされ、タイに向かって航行中であるとされている。ちなみに昨年の10月から12月にかけて、毎月約2,000個のコンテナーで約5万トンの鶏肉製品が輸出されていた。

 シップバックされた冷蔵コンテナーは一時港に留置されることとなるが、現状では、冷蔵装置稼動のための電源設備が不足している。また、鶏肉輸出企業にとって、冷蔵庫に保管するとしても、冷蔵庫は輸出向けの原料鶏肉で既に満杯であり、輸出の再開の目途が立たない現在、これら原料と製品の保管場所の確保と保管経費の負担が問題となっている。

鶏肉価格等の下落

 タイ商務省によると、政府が鳥インフルエンザの発生を認めた1月23日の前後の週でと畜された鶏(1キログラム当たり)が発生前は19〜35バーツ(51円〜95円:1バーツ=2.7円)であったが発生後は13〜15バーツ(35円〜41円)、飼料用トウモロコシ(1キログラム当たり)が発生前5バーツ(14円)であったが発生後は4.6バーツ(12円)となった。

 消費が激減した鶏肉価格の下落が特に激しい。このことに危機感を持った政府は、2月7日から「鶏肉消費キャンペーン」を行うこととしているが、2月1日に世界保健機構(WHO)が、鳥インフルエンザの人から人への感染を疑う声明を出しており、状況は厳しいままである。

シャモ等への影響

 また、今回の鳥インフルエンザの発生は、闘鶏用のシャモと観賞用の鳥に対しても大きな影響を与えた。これらの鳥は永年にわたって血統的に選抜され、多くの費用を費やして作られたものであるが、養鶏場のブロイラーと同様の補償で処分される見込みである。このため、納得できない者の一部は飼養する鳥とともに逃避したとも伝えられている。

 ハトによる鳥インフルエンザの拡散も心配されており、アルコールに浸した米を与えて駆除することが実行されている。

経済の動向

 株価指標は今後の経済の動向を、また個別企業にあっては今後の経営状況の見込みを占う指標として用いられるが、今年の1月におけるタイ証券取引所(SET)の株価指数と同国の鶏肉輸出産業を代表するGFPT社の株価動向は次のグラフの通りである。

 1月の初めと終わりのそれぞれの数値を比べると、株価指数は10%下落し、GFPT社の株価は29%下落している。特にGFPT社の株価は22日から休日を挟んだ26日にかけて大きく下がり、いかに日本等の輸入停止措置が大きく影響したかが分かる。株価指数は1月中頃から下落しており、鳥インフルエンザ騒動の発生時期と一致している。

 タイ政府は鳥インフルエンザの影響は限定的であるとの見方を崩していないが、その影響は次第に鶏肉産業以外の分野にも波及しつつある。


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