●●●農家収益が再び低下●●●
タイ農業協同組合省によると、2003年4月以降プラスを示していた農家収益は9月に入りマイナスに転じ、その後11月まで回復し、12月にはほぼゼロとなった。これは、生産費のうち、ひな価格が下がったものの、農家販売価格が低下したためである。
図1 農家収益(農家販売価格−生産費)
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資料:タイ農業協同組合省 |
図2 ブロイラー生産費の推移
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資料:タイ農業協同組合省 |
農家販売価格の低下は、ブロイラー生産量が増加したためと考えられる。
図3 農家販売価格の推移
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資料:タイ商務省 |
●●●鳥インフルエンザの鶏肉輸出への影響●●●
3月中旬現在、タイでは未だに、一部の地域で家きんの死亡が伝えられ、政府による鳥インフルエンザに対する撲滅宣言は出されていないが、事態は沈静化に向っており、タイ正月(ソンクラン)に向けた鶏肉需要の回復に関係者は明るさを感じている。
一方、海外市場をみると、日本とともにタイ産鶏肉製品の大口輸入先であるEUは、1月23日に今年に製造されたタイ産の家きん肉および家きん製品(70℃以上で加熱処理されたものを除く)などの輸入を一時停止したが、改めて2月6日にこれらの輸入一時停止措置の8月15日までの延長を決定した。ただし、沈静化による早期の解除もあるとしている。
ちなみに、鳥インフルエンザによる日本とEUなどの輸入制限措置が実施される直前3ヶ月間の鶏肉製品の平均輸出実績をタイ関税局の公表数値からみると、タイは月間約3万3千トンの冷凍鶏肉と同1万4千トン弱の鶏肉調製品を輸出していた。金額にするとそれぞれ、約23億バーツ(62億円:1バーツ=2.7円)と17億バーツ(46億円)になる。また、それぞれの輸出額に占める日本とEUとの合計割合はそれぞれ8割と9割を占めていた。
輸出するタイ側ばかりでなく、多くの需要者を抱える輸入国においても、需給の安定の面から、一日も早い事態の正常化が待たれる状況にある。
●●●加熱処理製品の処理コストの転嫁は困難●●●
2月末から3月の初旬にかけて日本向け加熱処理家きん肉などの指定施設として22工場が指定されるなど、鶏肉産業の復興が進んでいるが、そのうちの1つの管理部門に最近の状況を聞いた。
担当者の話によると、鶏肉加工品を加熱処理すると鶏肉などから水分が抜け、2割ほど歩留まりが落ちることとなる。また、この処理によって工程が増すため、コスト的には1キログラム当たり1.5米ドル(161円:1ドル=107円)ほど割高になる。
製品価格に直接反映させたいところであるが、日本市場の消費が完全に回復していないこと、まもなく中国からの鶏肉加工製品も供給開始されるので、コスト増の吸収は容易ではないとのことである。
ちなみに、原料鶏肉の供給は十分で、今後の生産も順調とのことであった。
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