フエゴ島の畜産(アルゼンチン)




ひとくちMemo

 フエゴ島は、南米大陸の南端に位置する南米最大の島(主島の面積4万8,187km2)で、マゼンラン海峡とドレーク海峡の間に位置し、ウシュアイアという世界最南端の町も有している。

 この地域はパタゴニアに属し、羊の飼養頭数が多いが牛の飼養も振興しており、今回はその飼養形態などについて紹介する。

 なお、南緯42度以南は口蹄疫ワクチン不接種清浄地域として国際獣疫事務局(OIE)からも承認されているが、フエゴ島の場合、西側がチリ領、東側がアルゼンチン領と分割されており、かつ飛行機または船でしか移動できない状況となっている。

 
写真1:東側のアルゼンチン領であるフエゴ島(以下単に「フエゴ島」という)の面積は2万1,571km2で、その半分が農場や放牧地となっている。飼養家畜は、羊がコリデール種52万頭強、牛は主にヘレフォード種3万頭弱。年間平均気温は5〜6℃で冬は風も強いため、毛の長い家畜が飼養に適しているとのことである。   写真2:大西洋側にあるサンパブロ農場(Estancia Cabo San Pablo)は、8,500ヘクタールでコリデール種を5,000頭、ヘレフォード種を1,300頭飼養している。肥育牛は夏の間は、山側の牧場(Estancia Boquerón)に放牧されている。なお写真は、15ヵ月齢の未経産の牛群。
 
写真3:冬には30〜40cm程度の雪が積もったり消えたりを繰り返す。家畜は冬の間も放牧されており、ニーレ(nire)と呼ばれる木の森で過ごすことが多い。ニーレの森では光が入るため下草が生え、家畜はそれを食べているが、7〜9月の冬の季節になると家畜は痩せてしまい、家畜には我慢をしてもらう時期とのこと   写真4:サンパブロ農場では、冬に与える飼料として乾草ロールが少しある。これは乾草ロール用の機械を近隣の農場に貸し付ける代わりに、その一部を利用料としてもらっている。この草は、ベーガと呼ばれるやや湿った土地に生えるカレックス(Carex)と呼ばれる草で、家畜が最も好んで食べるとのこと。なお、農家は越冬用に乾草の備蓄を啓発されているが、機械への投資意欲がなく、また昔から冬は休暇期間との意識があるので、なかなか普及しにくいとの話である。
写真5:アンデス山脈側のボケロン農場(Estancia Boquerón)は標高350メートルに位置し、3,500ヘクタールに約400頭の牛(預託牛を含む)が放牧されている。夏の間、放牧肥育され、冬に入る前の5月下旬頃に販売される。なお、生産された牛肉は島内で消費されている。奥に見えるのは、レンガ(Lenga)という木の森で、ニーレの森と違い光が中に入らないため下草が生えず、放牧地としては利用されない。
写真6:ボケロン農場に向かう山道に入る前にある集合柵。ここに牛を全て集めてから3時間かけてボケロン農場へ行く。
 なお、屋根の番号は1978年にアルゼンチンとチリとの間で、フエゴ島の南に位置する3島の所有を巡り戦争に突入する機運が高まったため、農場などの位置関係を迅速に判別しやすくするとともに、□は着陸可能、○は通信可能として区別した。なお、最近では雪が多い冬期に農場などの場所を把握するのに役立っている。

ブエノスアイレス駐在員事務所 犬塚明伸、横打友恵



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