生乳生産量は2010年までほぼ横ばいで推移


◇絵でみる需給動向◇


●●●欧州委員会、農畜産物の中期需給見通しを発表●●●

 欧州委員会は2004年3月、2003年から2010年における欧州連合(EU)の主要農畜産物の需給に関する中期見通しを公表した。今回の見通しには、EU農相理事会で2003年6月に合意された共通農業政策(CAP)改革、またEUが今年5月、東欧など10カ国(注)の加盟で25カ国となることなどを考慮に入れたものである。

 欧州委員会は農畜産物の需給動向予測に当たり、(1)新規加盟国(AC10)においては、新たな直接支払い制度および生乳生産割当(クオータ)制度の段階的な実施などの改革規則を2010年までに適用する(2)ウルグアイ・ラウンド(UR)合意の条件は2010年まで継続する(3)既に締結したFTAは今後とも継続する(4)EUの経済成長率は、2010年まで年平均2.5%とする−などを前提条件としている。

 (注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニアの10カ国

●●●2010年の生乳生産量は、1億2,250万トン●●●

 この需給見通しによれば、クオータ制度が実施されることから、現在の加盟国(EU15)における生乳生産量は2005年までほぼ横ばいで推移し、2006年から2008年までは微増を続けた後、安定的に推移するとしている。2010年の生乳生産量は、2003年と比較して0.7%増の1億2,250万トン、また出荷量は、同1.2%増の1億1,620万トンと見込まれている。今回併せて発表された新規加盟国(AC10)を加えた予測では、生乳生産量は2004年から2010年の間、1億4,400万トン台で推移し、2010年には2003年と比べ2.0%増の1億4,520万トンと見込まれている。なお、AC10における生乳生産量は2,200万トン台で推移し、これはEU25カ国全体の約15%を占めることとなり、今後EUの生乳生産において重要な役割を担うと予測されている。

 また、EU15カ国における乳用経産牛の飼養頭数は、毎年減少を続け2010年12月末は、2003年と比較して7.3%減の1,779万頭、1頭当たりの乳量は、毎年約1.0%増加し、2010年は同9.3%増の6,859キログラムと見込まれている。

●●●2010年までチーズ生産は増加、バター・脱脂粉乳は減少見込み●●●

 主要乳製品の需給見通しについては、EU15カ国におけるチーズ生産量は、消費量とともに2010年まで毎年着実に増加し、2010年の生産量は2003年と比較して6.7%増の780万7千トン、消費量は、同7.7%増の778万8千トン(1人当たりの消費量は20.24キログラム)と見込まれている。バター生産量は、2003年以降毎年減少し、2010年は2003年と比較して8.5%減の172万5千トン、消費量は2010年まで171〜172万トン台で安定して推移すると見込まれている。脱脂粉乳については、2010年の生産量は2003年と比較して25.7%減の79万8千トン、消費量は同9.1%減の81万2千トンで、2009年以降、消費量が生産量を上回ると見込まれている。このように、CAP改革により、バターと脱脂粉乳の介入価格が引き下げられることなどを踏まえ、バターや脱脂粉乳から、チーズなどの付加価値の高い製品への生産シフトに向けたEUにおける乳業の再編が加速すると見通している。

生乳の需給見通し
資料:欧州委員会
 注:乳用経産牛飼養頭数は、各年12月末


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