●●●2004/05年度の乳価は3.50NZドル前後●●●
ニュージーランド(NZ)の巨大乳業メーカーフォンテラは3月12日、2004/05年度の生乳生産者に対する暫定支払乳価(乳固形分ベース)を、2003/04年度比で約15%減の1キログラム当たり3.50NZドル(252円;1NZドル=72円)(±5%の変動幅あり)とする見込みであると発表した。
フォンテラは、乳製品の生産量の9割以上を輸出しており、その時々の為替相場や乳製品に関する国際市況の影響を受けやすい経営体質となっている。今回の乳価を引き下げる要因についても、最近のNZドル高が大きく影響を及ぼしているとしている。また、現在安定している乳製品の国際市況価格についても、来年度は乳価決定の重要な要素になり得るとしている。
フォンテラではこのような乳価の引下げ見込みに対し、2003/04年度はコスト削減と製品の付加価値の増加によってNZドル高の影響を相殺できたように、2004/05年度も乳価に好影響を与えることができるよう引き続き努力していくと述べている。
また、今回の乳価発表は2004/05年度の予算確定前となったが、この理由について「われわれの予測が完全に固まったわけではないが、われわれが置かれている現在の状況を生産者に示したかった」と述べ、生産者に厳しい現状の理解を求めている。なお、過去の乳価は次の通り。
●●●生乳生産者にとって厳しい内容●●●
一方、フォンテラの乳価発表を受けて、NZ農民同盟の酪農グループ(DFNZ)代表は、この乳価の引き下げで生乳生産者は大幅な収入減に見舞われると述べている。これによると、フォンテラへ供給している生乳生産者の年間平均乳量は9万kg(乳固形分ベース、以下同じ)あるが、2004/05年度乳価が3.50NZドルに決定されると、2003/04年度に比べ年間約6万NZドル(432万円)の減収が見込まれる。また、酪農はNZの基幹産業であるが、フォンテラの集乳量は年間11億5,000万kgとなるため、乳価の低下によって、NZの国内経済全体に7億5,000万NZドル(540億円)の損失を与えるとみている。
DFNZの代表はこの状況に対処するため生乳生産者に対し次のことを喚起すると述べている。(1)2003/04年度収入の一部の貯蓄 (2)投入コストを削減するとともに、生産効率を高め生産性の向上を図る
(3)フォンテラの業務運営内容を厳しく注視する (4)政府が経費負担増となるような不要な規制を課さないよう注意する─など。
●●●南島の生産者に影響大との報道も●●●
また、報道によると、今回の乳価の引下げは、小規模な生産者よりも最近規模拡大を行った生産者に大きな影響を及ぼすとみている。南島では近年酪農の新規参入が行われており、それらの者の大規模な灌漑用水の費用や酪農経営への転換に要した費用などが、生乳1キログラムの生産費に換算すると3.30〜3.40NZドル(238〜245円)に相当するとみられており、これらの生産者の抵抗が予想される。さらに、一部の経済専門家によれば、このNZドル高の状態が続けば、2005/06年度の乳価も同程度になり、生産者への影響が懸念されるとしている(ただし、フォンテラは否定している)。なお、昨年フォンテラに買収された豪州のボンラックフーズ社へ生乳を供給する生産者も同様な影響を被る。4月末には正式に来年度の暫定乳価が発表される予定である。
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