欧州委員会は2004年3月、2003年から2010年における欧州連合(EU)の主要農畜産物の需給に関する中期見通しを公表した。豚肉の需給見通しの概要は、次の通りである(需給見通しを行う上での前提条件については、本誌需給欄の牛乳・乳製品(EU)を参照)。
●●●2010年の生産量は1,879万9千トン●●●
豚肉生産量は、域内消費や域外向け輸出の増加が見込まれることから、現在の加盟国(EU15)全体としては、毎年一貫して増加傾向で推移し、2010年の生産量は、2003年と比較して4.9%増の1,879万9千トンと見込まれている。また、今回併せて発表された新規加盟国(AC10)(注)では豚の肉質や、飼料効率の低さなどの点でEU15カ国と比べ劣るため、加盟直後の2004年までは生産量が減少するが、2005年以降は増加傾向で推移し、2010年には2004年までと比較して21.9%増の390万トンとEU25全体の約17%を占めると見込まれている。
(注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニアの10カ国
●●●消費量は1,761万3千トン●●●
一方、消費量は、AC10を含めたEU25全体で着実に増加することが予想されている。EUの食肉消費は、2000年末の牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃により、牛肉に対する消費者の不安から豚肉および鶏肉へのシフトがみられた。消費者の豚肉に対する支持は、鶏肉よりは少ないものの今後とも続くとみられている。2010年のEU15カ国における消費量は、2003年と比べて4.7%増の1,761万3千トン(1人当たりの消費量は、3.3%増の45.70キログラム)、AC10においては17.1%増の410万トンと大幅な増加が見込まれている。また、EU25カ国の輸出可能量は、豚肉の消費が拡大するものの、それ以上に生産が拡大することから、2003年の110万トンから2010年には140万トンに増加すると見込まれている。
●●●輸出も輸入も2010年は最大●●●
域外向け輸出量は、主要輸出先であるロシアで2003年より関税割当制度が実施されたことや同国への輸出をめぐってブラジル産などと競合することなどから2005年までは減少傾向で推移するものの、2006年以降は増加傾向で推移し、2010年には見通し期間で最大の127万5千トン(2003年と比較すると6.3%増)まで増加すると見込まれている。これは、主要輸出先である日本や韓国向けなどの輸出が増加することなどを見込んでいるものと考えられる。
一方、域外からの輸入は、2003年以降AC10以外の中・東欧等諸国や米国、豪州などからの輸入増加が予測され、2010年の輸入量は2003年と比較して44.6%増の9万4千トンと大幅な増加が見込まれている。
表1 豚肉の需給見通し(EU15カ国)
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(単位:千トン)
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表2 豚肉の需給見通し(EU25カ国)
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(単位:百万トン)
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資料:欧州委員会
注:枝肉重量ベース |
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