豪州、米国通商代表発言に批判


CCAは米通商代表に謝罪要求

 豪州肉牛協議会(CCA)は3月12日、ゼーリック米国通商代表部(USTR)代表が同月9日の上院財政委員会で豪州産牛肉の品質を「筋っぽい(stringy)」と批評し、日本人は豪州産牛肉を好まないとの推論を証言したとの報道について、同代表の発言は事実無根で極めて失望的として即刻の謝罪を要求する次のような声明を発表した。

(1) 世界最大の牛肉輸出国としての豪州の地位は、その品質と安全性によって成り立っており、同代表の発言は豪州の生産者に対する最大の侮辱である。

(2) 同代表の発言は、米国の牛海綿状脳症(BSE)発生による日本の米国産牛肉の禁輸措置を背景としたものであり、米国のBSE発生後に豪州は日本に対する最も有力な供給国となったが、この状況は豪州の生産者の責任ではない。

(3) 同代表の発言は、豪州牛肉産業に対する不正かつ誠意のない非難であるとともに、豪州牛肉産業にとって好ましくない結果となった豪米自由貿易協定(FTA)交渉後のわずか数週間でのことであり、これは同代表が豪州牛肉産業に対して何らかの悪意を持っていることの表れである。

 加えてBSE問題に関連して、「CCAは、日本や韓国のようなカギを握る市場に対して科学的見地に立脚するよう説得することについて、米国の生産者団体と強い同盟関係を持っているが、豪州と米国の牛肉生産者がBSE問題に協力して取り組んでいる時に、同代表の発言は極めて遺憾である」としている。

 ただし、CCAは、「牛肉の国際的な需要拡大が牛肉生産者の目標であり、協力関係において長い歴史を持つ米国の牛肉生産者とより緊密に取り組むつもりである」と米国の生産者との連携は継続するとの意志を表明している。

農相は間違いかつ無神経な発言と

 豪州連邦政府のトラス農相も同日、「ゼーリック代表が豪州産牛肉の品質を批判した日本からの報道が正確であるなら」と慎重に前置きした上で、同代表の発言内容は「明らかな間違い」で「無神経である」と次のように述べた。

(1) 過去において同代表は豪州産牛肉の品質に関する評判を受け入れており、豪州は過去3年間約37万8千トンの対米牛肉輸出枠を完全に満たしている状況であることから、米国の消費者も同意するとみられる。

(2) 同じ米国上院財政委員会における証言において、同代表は自身「少し脂肪っぽい(a little fattier)」と認める米国製品に対して豪州産加工用牛肉が「良い補完物になる」ことを認めている。

(3) 最近の豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の調査によれば、豪州国内の消費者のおよそ80%が品質を含め豪州産牛肉に満足しており、国内消費者の信頼は厚い。

 なお、同農相は「幸いにも大部分の日本の消費者の意見と同代表の主張は一致しない」とし、「今すぐゼーリック氏は偉大なオージー・ステーキを食べるべきである」との所感を加えた。

MLAは輸出国の努力に水をさすものと

 MLAのスパー社長も3月15日、日本訪問後発表した声明の中で、ゼーリック代表の発言について「誤った情報を伝え、協力関係を損ねるもの」と次のように触れた。

(1) ACニールセン(市場調査会社)の2003年における日本市場調査によれば、日本の消費者は米国産に比べ豪州産を高く評価している。

(2) 米国が日本市場での牛肉需要拡大に他の牛肉輸出国と協力して取り組むべき時に、同代表の発言は皆の努力に水をさすものでしかない。

 このように、米国のBSE問題については、豪州は官民とも米国の置かれた立場に対して、同情感を表明するなど十分な配慮を見せていただけに、極めて心外な発言として批判的である。


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