牛肉はセーフガードの導入も
豪州政府は3月4日、米国と締結した自由貿易協定(FTA)合意内容の詳細についての草案を公表した。2月8日のFTA合意発表後、野党側が公表を強く要求していたこともあり、早期の公表となった模様である。牛肉および牛乳・乳製品についてのFTAの内容は次の通り。
○牛 肉
・関税割当枠について現行の37万8,214トンを、18年間かけて7万トン漸増する。FTA発効後2年目の1万5,000トンの関税割当枠の拡大は、米国の牛肉輸出量が牛海綿状脳症(BSE)発生前(2003年)のレベルに回復したときのみ可能となる。3年目以降の関税割当枠の拡大は米国の輸出量の多寡にかかわらず保証される。19年目以降、関税割当枠を廃止し数量制限を撤廃。
・枠内関税(4.4USセント/kg)は直ちに廃止。関税割当枠超過分の関税(26.40%)も9年目から漸減し、18年目には撤廃。
・FTAでの増枠分は、枝肉や特殊な牛肉調整品を対象外とする。
・数量面および価格面を基準にしたセーフガードを設ける。(1)数量によるセーフガード:9年目〜18年目に適用され、米国への輸出量が、その年のFTAでの増枠分の110%に相当する数量に従来の関税枠分を加えた数量を超えた場合、セーフガードの発動対象となる。(例:15年目のFTA追加関税枠5万トン。この110%相当量=5万5,000トン。従来の関税枠37万8,214トン+5万5,000トン=43万3,214トン。15年目ではこの数量を超えると発動可能となる。)関税割当枠を超えた分については、割増関税が課せられる。(2)価格によるセーフガード:このセーフガードが発動可能となるのは19年目以降で、輸出数量が18年目の関税割当数量44万8,214トンに7万トンの0.6%相当量(420トン)を加えた数量を超えた場合(20年目以降毎年420トンずつ上乗せ)で、かつ、各四半期のうち2カ月の米国における牛肉価格が過去24カ月の平均価格より6.5%下落したときに発動可能となる(ただし、最後の四半期は1カ月のみ下回ったら発動可能となる)。セーフガードの発動期間は、3カ月間あるいは発動後その年の終了までのどちらか短い期間となる。
○牛乳・乳製品
・関税割当枠については、チーズや粉乳などそれぞれの品目ごとに現行の関税割当枠を、初年度は一定の数量分拡大し(関税割当枠がないものは新たに関税割当枠を設け)、2年目以降はそれぞれ3〜6%の定められた増加率で漸増する。
・枠内関税は直ちに廃止。関税割当枠超過分の関税は変更なし。
・関税割当は維持。
・20年後に再協議可能。
トラス農相、FTAの成果を強調
トラス農相は同日、このFTA合意内容の詳細の公表を歓迎するとの声明を発表した。同農相は、既存の検疫制度を守り抜いたことや小麦などの輸出専売制度を維持したことを強調し、また、FTA合意によって、牛肉、乳製品、野菜などの米国市場への輸出が速やかに拡大するとその利点を評価している。さらに、このFTA合意が農産物貿易の改革を目指した世界貿易機関(WTO)農業交渉の進展を促すものになるとみている。
ただし、最大野党である労働党は、FTAは農業者にとって不利な協定であると述べ、農業者から意見を聞いてFTAの批准に反対するか否か決定するとしている。
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