飼料価格などの上昇が養鶏経営に与える影響大 ● インドネシア


配合飼料のほとんどは養鶏用

 インドネシアで生産される配合飼料の約9割は養鶏用に仕向けられているが、これは同国ではイスラム教徒の人口が9割近くを占め、食肉消費の中心が鶏肉となっているためである。鳥インフルエンザの発生が間接的に飼料需給に影響を与えているほかに、特に最近、他の発生国の生産再開による需要増への期待や海上運賃の高騰などによる一部の飼料原料価格の上昇が認められ、同国の養鶏産業回復の先行きに影を落としている。

大豆ミール価格の上昇の影響

 インドネシアにおける養鶏用配合飼料原料の重量構成割合の約5割がトウモロコシで、同2割が大豆ミールであり、残りが米ぬか、ふすま、そして魚粉となっている。

このうちトウモロコシに関しては、昨年の国内産の収穫の遅れへの対応により飼料会社が輸入したものが鳥インフルエンザ発生による飼料の需要減により在庫となっており、数量的には確保されている状態である。

 一方、大豆ミールは、たんぱく供給源の中心として使用され、そのほとんどを輸入に頼っている。価格はトウモロコシの約2倍であるが、その価格が大幅に上昇している。原料となる大豆の最近の価格について、同国の飼料生産者協会(GPMT)によれば、C&Fベースで320米ドル(34,240円:1ドル=107円)から400米ドル(42,800円)に上昇したとされている。

 価格上昇の原因は、国際的に在庫が減少傾向にあると見込まれることと、海上輸送料が上昇しているためである。インドネシアは2003年に約170万トンを輸入したが、その54%をブラジル、31%を米国から、そして残りをアルゼンチンや中国等からとなっている。今年は米国とブラジルでの減産が予想されている。加えて、大豆ミールは牛海綿状脳症(BSE)の発生により肉骨粉の代替としての需要が高まっている。

 また、海上輸送料については、中国の鉄鉱石輸送等と日本の石炭輸送に船腹が仕向けられたことにより、需給がひっ迫している。ちなみに、パナマ運河を通過する場合の北米から日本への飼料原料1トン当たりの海上運賃を比較すると、昨年の9月の中頃で34ドル(3,638円)であったものが3月の中旬では73ドル(7,811円)と約2倍になっている。

 このような状況から、GPMTは近い将来、配合飼料価格は現在より15%程度上昇し、1キログラム当たり2,650ルピア(27円:100ルピア=1円)になると予想している。

コスト上昇が避けられない養鶏経営

 現在、インドネシアにおける鳥インフルエンザの終息が確認されていないこともあり、鶏肉消費の完全な回復には到っていないが、事態は落ち着きつつある。インドネシア養鶏業者協会(PPUI)は、鶏肉価格は依然として収益分岐点の1キログラム当たり7,500ルピア(75円)を下回るものの、一時3,800ルピア(38円)だったものが6,100ルピア(61円)まで回復しつつあるとしている。

 しかしながら、鳥インフルエンザの発生により鶏肉需要が激減し、その結果、ひな生産が縮小したため、需給バランスの崩れから、現在、ひな価格が上昇している。鳥インフルエンザ発生前に肉用1羽当たり700ルピア(7円)であったものが、3月上旬は約3倍の2,000ルピア(20円)となっている。採卵鶏のひなについても、ほぼ発生前の水準である、1羽当たり4,000ルピア(40円)から5,000ルピア(50円)の水準になっている。

 いずれ、政府による鳥インフルエンザの終息宣言が出され、鶏肉等の需要が回復することが期待されるが、インドネシアの養鶏企業にとっては、コストのほとんどを占める飼料とひな価格の上昇が懸念されており、早期の経営改善は見込めそうにない状況である。


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