官民合同の複合モデル農場事業開始     ● マレーシア


複合モデル農場事業開始

 マレーシア南部ジョホール州で建設が進められていた官民合同の大規模複合農場プロジェクトが本格的に事業を開始した。今年2月12日に同州クルアンで行われたオープニングセレモニーにはアブドラ首相をはじめ関係閣僚などが出席した。このプロジェクトは、同州のアイヒタム地区を含む合計3カ所、約3,500ヘクタールの土地を利用した複合農業施設として、水産養殖部門、野菜部門、果樹部門、畜産部門などの機械化、集約化を図ることとされている。同プロジェクトの参加企業20社のうち、畜産関連は4社となっている。これらは、大規模プランテーションとの複合で昨年9月に同州カハン地区において事業を開始している。

 同国農業相の説明によると、このプロジェクトの事業費総額は1億リンギ(29億円:1リンギ=29円)で、基本インフラの整備や政府による参加民間企業への効果的な事業拡張意欲の増進対策を進めるとしている。また参加企業に対して、低額で事業用地の貸し付けを行うとした。

同相は2002年の食料部門の貿易赤字は60億リンギ(1,740億円)に上るとし、同様の事業を将来的に全国規模で展開することにより、食料自給率を高め貿易赤字解消につなげたいとした。

国家計画の中での位置付け

 このプロジェクトは、同国の国家計画である第8次マレーシアプラン(2001-2005)および第3次マレーシア農業政策(1998-2010)で規定する目標を達成するために、前マハティール首相の発案により開始され、昨年の同氏の引退により現政権に引き継がれたものである。

 当事業は同国初の大規模複合モデル農場として、食料の自給率向上と食料輸入依存体質からの脱却を図るなど、国家開発計画で定めた目標を達成するための試金石と位置付けられている。

油ヤシ副産物利用技術の活用

 またマレーシア農業開発研究所(Mardi)は2月、大規模プランテーションと反すう家畜飼養の複合経営のため、同国で従来実用化が研究されていた油ヤシの茎葉等の副産物を利用した飼料キューブやペレットの製品化について、研究成果を公表した。

 同国の油ヤシプランテーションの面積は2003年時点で約375万ヘクタール、全耕地面積の約59%を占める。また、天然ゴム園の約132万ヘクタールを含めると耕地面積の79%(第8次マレーシアプラン中間報告による数字)に上るものの、これら大規模プランテーションは従来、農業部門最大の外貨獲得源であったことなどから、他耕種への転用や、畜産との複合形態を採ることは少なく、食料の国内自給達成の妨げになっていた。

 Mardiは政府のプランテーションにおける未利用資源を有効活用する方針に沿って、農園内での家畜放牧による下草利用や副産物を活用した飼料用製品を有効活用したいとしている。

 農業相は、同国が毎年およそ250万トンの飼料用トウモロコシを輸入しており、昨年の輸入額はおよそ12億リンギ(348億円)、大豆は同じく11億リンギ(319億円)に上るとされており、これら副産物の利用により飼料コストを従来の20-30%削減できるとしている。

 また同相は、これら製品の輸出を当面考えておらず、国内で飼養されている反すう家畜に給与することで飼料用穀物の輸入を減らし、貿易赤字の削減に資することを優先するとしている。

(参照:http://www.mardi.my/


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