タイ農業省は2月19日、輸出専用養鶏地域設定の政府案を公表した。
これは、今回のタイにおける高病原性鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の発生により、人命が失われ、鶏肉消費が激減したばかりでなく国内の各分野に影響が及ぶとともに、年間約10億ドル(1,070億円:1ドル=107円)を売り上げる重要な輸出産業である鶏肉産業が日本やEUの輸入禁止により製品のシップバックなど大きな被害を被ったことに対する今後の対策として提示されたものである。
具体的には、鶏肉の生産地域を輸出用と国内用に分けることにより、国内で鶏の疾病が発生した場合においても、輸出専用養鶏地域が無事であれば、輸出を継続できるようにするものである。
政府案
政府はこの輸出専用養鶏地域を設定するには、EUや日本が非輸出専用養鶏地域で鳥インフルエンザのような疾病が発生した場合にも輸出専用養鶏地域のものを買い入れてくれるかどうか交渉する必要があることと、国際関係機関にもこの新方式を説明し、承認を得ることが前提条件であるとした。政府案の内容は次の通り。
○ 輸出専用養鶏地域から生産される鶏肉は国内向けに供給可能であるが、それ以外の地域の鶏肉を輸出用に仕向けることはできない。
これは、鶏肉輸入国の多くが輸入する鶏肉に対して厳しい規制措置を採っているためであり、事実、幾つかの国内生産者は輸入相手国が求める食品安全基準をクリアできていない。
○ 輸出専用養鶏地域では、採卵鶏、ブロイラー、闘鶏、地鶏にも同様の基準が適用される。もし生産者がこの地域以外において家きんを飼養しており、その家きんの輸出を希望する場合には対象地域に移転する必要がある。そうしなければ、農業協同組合省畜産開発局(DLD)は輸出に必要な証明書を発行せず、また、規則に従わない場合は罰せられることとなる。
○ 輸出専用養鶏地域では閉鎖型鶏舎を導入する必要があるとともに、疾病のまん延防止と家きんの移動を厳しい基準の下で行わなければならない。また、生産者を追跡調査するシステムを設定し、薬品の使用についても、関係機関により詳細に監視されることとなる。
これらの規制は、国際的な信用を保持するために、中小の養鶏業者に対しての緩和策、いわゆる二重基準は設定しない。
○ 農業省は将来における疾病のまん延を防止するために全国の闘鶏にマイクロチップを埋め込むことを計画している。
輸出専用養鶏地域の設定の理想を挙げれば、渡り鳥の通り道でなく、過去に病気が発生したことが無く、池や沼がないところが望ましい。
関係者の反応
これらの政府の説明に対して、ある県鶏卵ふ化組合理事長は、輸出用と国内用生産の地域の分離には同意するものの、将来の疾病発生に対する効果は疑問であり、閉鎖型鶏舎の採用は小規模生産者の生産コストを上昇させるとしている。
また、ブロイラー加工輸出協会会長は、個人的な意見として、地域設定は鳥インフルエンザだけでなく、他の疾病にも有効とみており、賛成しているが、貿易協会名誉幹事長は、地域の分離は生産者の輸出専用養鶏地域への移転を加速させるにすぎず、むしろ政府は、小規模生産者の施設の充実などに手を貸すべきとしている。
このように関係者の意見が分かれているのに加えて、国際的な調整を必要としており今後の推移が注目される。
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