米国で確認されたBSE発生牛のカナダでの追跡結果
カナダ食品検査庁(CFIA)は3月20日、昨年カナダおよび米国で発見された牛海綿状脳症(BSE)発生牛の感染源などに関する調査結果を公表した。
昨年12月、米国ワシントン州で確認されたBSE発生牛のカナダでの出生起源、米国に輸出されるまでの移動履歴、出生農場における同居牛の検証を行っている。当該牛は、耳標、農場記録および父牛などとのDNA鑑定から97年4月9日にアルバータ州の農場で生まれた。同農場は2001年9月、当該牛を含む113頭(1頭が生体市場、3頭が自家と畜、11頭が酪農家、17頭が複数の場所へ移動、そして当該牛を含む81頭が米国ワシントン州の育成農場へ輸出)を売却した。その後、当該牛を含む70頭がBSE発生牛出荷農場に移動したとしている。
また、カナダのアルバータ州の出生農場における同居牛57頭について、27頭がと畜または死亡、発生牛を含む25頭が米国へ輸出(これは前述の81頭に含まれている)、同州内に生存していた3頭(乳牛1頭、乳用肥育牛2頭)はとう汰(BSE検査の結果は陰性)、96年5月と同年11月出生の2頭は追跡不可能としている。
加えて出生農場と同じ飼料給与がされていた関連農場の同居牛57頭のうち、飼育されていた9頭はBSE検査のためとう汰(検査結果は陰性)、42頭はと畜または死亡、4頭は別の農場で生存し監視中、2頭が追跡不可能としている。
BSE感染源は家畜用飼料の可能性示唆
出生農場で給与されていた飼料は、2カ所の飼料工場から供給された乳用飼料とたんぱく質サプリメントであったとしている。CFIAは飼料工場の調査を行い、97年の反すう動物由来のたんぱく質給与禁止以前は、これらの乳用飼料に反すう動物由来のたんぱく質として肉骨粉が合法的に使用されていたとしている。また、82年から89年にかけてイギリスから生体牛が輸入されたが、既にイギリスにおいては、この時期にBSEの発生が確認されていた。その後、イギリスからの輸入牛はカナダ国内でと畜され、それらが反すう動物由来の肉骨粉として製造され、家畜用飼料に配合された可能性がある。これらから、カナダを出生起源とする2頭のBSE発生牛の感染源はイギリス由来の生体牛から製造された肉骨粉との可能性があるとしている。
BSE発生による生産者などへの経営支援対策を発表
カナダのマーティン首相とスペラー農相は3月22日、BSE発生と各国の輸入停止措置などの影響により経営状況が厳しい肉牛生産者や牛肉業界に対し、総額9億9,500万カナダドル(約816億円、1カナダドル=82円)の支援策を講じると発表した。マーティン首相は、「これまでカナダの肉牛生産者と牛肉業界は成功を収めてきたが、BSE発生による各国の輸入停止措置により崩壊の危機にある。政府は、すべての輸入禁止措置が解除されるまで生産者および業界が必要としている支援策を講じる」と述べた。スペラー農相も「2003年の農家所得はこれまでにない低い水準となった。カナダの農業者は前例のない試練に立たされていると同時に新たな永続的な収入と災害支援プログラムが動き出している。これは、われわれの肉牛生産者などの困難に終止符を打つだけでなく、すべての農業部門を救済するものである」と述べた。支援策の内容は次の通り
・暫定的な生産者支援プログラム
(1)肉牛生産者および反すう動物家畜生産者(2003年12月末時点で適格な肉牛等家畜を保有)に対し、畜種によって1頭当たり最高80カナダドル(6,560円)を直接生産者に支払うもので、予算額6億8,000万カナダドル(約558億円)(2)すべての適格な商品を生産する生産者(関連する業界も含む)に対し、過去の収入に基づき直接生産者等に補てん金が支払われる新たなカナダ農業所得安定(CAIS)プログラムに移行するまでの一時的なプログラム。予算額2億5,000万カナダドル(約205億円)となっている。
・カナダ農業者所得プログラム(CFIP)
国内農業生産者の自らの調整を超える規模で所得が減少した場合(災害など)に国と州が6対4の割合で所得補償を行うもので、予算額6,500万カナダドル(約53億円)となっている。
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