米国内で初のBSE発生(その6)


ベネマン農務長官BSEサーベイランスの大幅な拡大を公表

 ベネマン米農務長官は3月15日、牛海綿状脳症(BSE)に関するサーベイランスの頭数を4万頭から大幅に拡大する方針を公表した。今回のサーベイランスの拡大は、2月4日に公表された海外家畜疾病諮問委員会BSE・小委員会の勧告ならびに、3月12日にハーバード・リスクアセスメントセンターから米農務省(USDA)のサーベイランス拡大案に対して提出されたコメントを踏まえたものである。サーベイランスの強化に伴い必要となる費用については、商品金融公社から7,000万ドル(74億9,000円、1ドル=107円)を移管する。

高リスク牛を可能な限り検査

 USDAは、具体的な対象については、歩行困難牛、中枢神経症状を示している牛、その他BSE関連症状を示している牛および死亡牛であるとしている。サーベイランスの対象となる高リスク牛集団は年間44万6千頭と推計されるが、具体的な目標頭数は設定しておらず、あくまで可能な限り多くのサンプリングを今後12〜18カ月間行うとしている。ただし、サンプリングに際しては地理的な牛の分布にも配慮するとし、26万8千頭のサンプリングを行えば仮に1千万頭に1頭の割合でBSEの陽性牛が存在するとしても99%の信頼度で摘発が可能とし、20万1千頭のサンプリングを行えば95%の信頼度が得られるとしている。

 今回のサーベイランスは、米国内へのBSEの浸潤を調べるもので一時的な措置であるとし、その後についてはサーベイランス結果を踏まえて検討するとしている。

 なお、別途正常な高齢牛についても国内の40カ所のと畜場で2万頭のサンプリングを併せて行うとしている。

サーベイランスには急速免疫診断検査をスクリーニング検査として使用

 サーベイランス検査のための採材はUSDAおよび州政府の衛生・家畜衛生担当者、契約獣医師、訓練を受けた委託契約者により行う。採材場所としては、連邦政府または州政府により検査が行われていると畜場、農場、レンダリング施設、獣医学診断施設、家畜病院等が挙げられている。スクリーニング検査として急速免疫診断検査を用いるが、公的な機関で行うことが適当であるとし、連邦または州の獣医学診断施設で実施する。急速免疫診断検査キットについては、まもなく1ないしそれ以上を認可する予定である。急速免疫診断検査で陽性となったものは、あくまで擬陽性(suspects)とし、アイオワ州エイムズにある連邦獣医局検査施設(NVSL)にて免疫組織科学検査(IHC)またはウエスタンブロッド法等により確定診断を行う。

市場への流通を目的とした検査の実施については慎重

 一部の食肉処理業者等が自主的なBSE検査の実施を許可するよう求めている件については、今回公表したのはサーベイランス検査の強化であり、市場性や食品の安全を目的とするものではない。サーベイランスの観点からすれば、市場性のための検査は、(30カ月齢以下でと畜される牛が主たる対象であることから)BSE陽性が摘発されることが期待されるものではなく、実施する価値がない。市場性のための検査の提案については、評価検討が行われているが現時点では結論に至っていない。

 また、サーベイランスの対象を全頭に拡大することについては、ヨーロッパで2年間に1,800万頭以上が検査されたが30カ月未満で摘発されたのは2頭であったこと、専門家は30カ月以上にサーベイランスを集中させることが効果的であるとしているとしてこれを否定している。

ハーバード・リスクアセスメントセンターによるBSE小委員会の勧告のレビュー

 ワシントンDCで3月17日に開催された、講演会で、ハーバード・リスクアセスメントセンターのグレイ博士は、現在BSE小委員会のメンバーと接触しているところであり、BSE小委員会の勧告のレビューは夏以降となる見通しであるとした。

 また、同センターのリスクアセスメントは数理モデルによる解析であり、USDAに対し何らの勧告も行っていないことを強調した。


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