アンチダンピングと相殺関税に関する調査を申請
米国の全国豚肉生産者協議会(NPPC)は3月5日、米商務省(DOC)および米国際貿易委員会(ITC)に対して、カナダから輸入される生体豚に対するアンチダンピングとカナダの養豚生産関連の助成措置に対する相殺関税の貿易問題についての調査の実施を申請したとNPPCの年次総会で発表した。
NPPCは、「カナダの肉豚生産者が違法な助成金を受け取っていないか、そしてカナダ国内の生体豚価格よりも低い価格で米国へ売っていないかについて調査するよう求めている。今回のような国内価格より低い価格で外国へ輸出するのはダンピング行為であり、米国の不公平な取引に関する法律および世界貿易機関(WTO)協定に違反している。また、カナダの生産者はカナダ政府から多くの助成金を受け取っている。これは、市場価格を無視した人為的な価格を形成するものであり、それにより米国の農業やビジネスのサイクルを崩壊させるものである。不公平な助成金と不当に安い価格設定を排除するために、カナダからの生体豚輸入に対してアンチダンピング税と相殺関税を5〜20%で課税することを求める」としている。
生体豚輸入の急激な増加とダンピング価格が生体豚価格の下落要因
今回の申請に当たりNPPCがDOCおよびITCに提出したアンチダンピングなどに関する報告によれば、
(1) 2001年の年間の生体豚価格は100ポンド当たり約44ドル(キログラム当たり約103円、1ドル=107円)であったが、2002年には同33ドル(同約78円)に下落した。2003年は、国内生産量が減少したもののカナダからの生体豚の輸入が更に増加したことにより年間の生体豚価格は同約38ドル(約90円)と若干持ち直したものの2001年を下回った。これは、カナダからの生体豚の輸入頭数が、2001年の530万頭から2003年は37%増の730万頭となっており、このことが国内のと畜頭数の増大を生み豚肉市場に供給過多を起こした。この結果、生体市場は弱含みとなり、生体豚価格に影響を与えた。
(2) 2002年10月〜2003年9月末におけるカナダから輸入された生体豚価格の平均は1頭当たり約86ドル(約9,202円)であったのに対し、カナダ・オンタリオ州における生体豚価格は約93ドル(約9,951円)と約7ドル(約749円)低い価格で輸入されている。
(3) カナダ政府は、過去5年間の市場平均価格を基準とし、取引価格がこの価格を下回った場合、助成金を交付する価格安定プログラムなどを実施している。
などを今回の申請理由としてあげている。
早ければ今夏から相殺関税・アンチダンピング税賦課の可能性
今後、DOCおよびITCは、NPPCが提出した申請に基づきダンピングの事実、それによる実質的な損害、ダンピング品目との因果関係、助成金を受けた品目の輸入の事実などに関し、これを受理するかどうか検討した後、アンチダンピングと相殺関税についての調査を実施することとなっている。DOCはダンピングによる利益幅(マージン)と相殺関税額について、ITCは不公平な貿易により輸入されたカナダからの生体豚が米国豚肉産業に損害を与えたかについて、それぞれの決定を下すこととなっている。現時点では、DOCの調査開始が3月25日、ITCの仮決定が4月19日までに行われる予定である。手続きが順調に進んだ場合、早ければ6月から相殺関税が実施され、アンチダンピング税についても8月中旬から実施される可能性があり、その動向が注目される。
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