大統領、農牧部門の負債軽減策を発表
8月23日キルチネル大統領は、農牧部門が国立銀行から受けている融資のうち債務不履行となっている小規模農家を対象に、大規模な借り換えプロジェクトを実施することを発表した。この中で大統領は「債務者に対する貸付けの支援と支払い可能な利率の設定により、農牧生産への支持を続けていく」ことや「債務弁済のみだけではなく(農業生産に対する)投資に軸を移すことを期待する」と話した。なお、会見の場には経済生産大臣、国立銀行総裁、州知事、生産者団体代表なども同席している。
このプロジェクトの対象となるのは、原債務額が20万ペソ(約740万円、1ペソ=37円)以下で、かつ30カ月以上の債務不履行の者など12,178人であり、その対象額は6億6,380万ペソ(約246億円)となる。国立銀行によれば農牧部門の債務は、2002年4月時点で38,119人、23億1,960万ペソ(約858億円)であったものが、2004年7月には13,592人、12億1,900ペソ(約451億円)まで減少しており、これはペソの切り下げ、ドル建て債務のペソ化、穀物の国際価格の上昇によるものであるとしている。なお今回の借り換えプロジェクトでは、全債務者の89.6%、全債務額の54.5%がカバーされることになる。
このプロジェクトでは、原契約からの経過期間、契約時の通貨(ドルまたはペソ)、保証・担保額により、債務の12〜68%が免除され、さらに利率18.85%に対し国立銀行は、優良返済者に対し利率を3割下げる予定である。また政府としては新たに信託基金を設立し、農牧水産食糧庁が3.0%分の利子補給を行うことになっている。さらに、すべての州が了解しているわけではないが、3.0%分を州政府が補給する可能性も残されている。
そのほか、償還期間は通常の5年までが10年までとなり、支払いは1カ月、3カ月、6カ月ごとを選択することになる。ただし、第1回目の支払いは契約日以降における収穫時期など生産サイクルの初回と連動させ、10%を返済することなどが条件となっており、受付期限は本年12月31日までである。なお国立銀行は、このプロジェクトに加入し債務を弁済できなくなった場合でも国立銀行のみが債権者であれば、生産者の不動産を差し押さえ、競売にかけるようなことはしないと約束している。
農業団体からは評価の声
アルゼンチン農牧協会(SRA)のミゲンス会長は、当プロジェクトに満足の意を表明し「債務問題がほぼ完全に解決されるであろう。2年間で債務の履行遅滞者などが13,000人までに減り、そしてこのプロジェクトで1,400人に過ぎなくなるであろう。非常に明るい展望である」と話した。
また農協連盟(CONINAGRO)のライテリ会長は「この措置により、多数の農牧生産者が生産活動を再開することが可能となった」、アルゼンチン農牧連盟(CRA)のレヘーレン会長は「本プロジェクトでは原債務額20万ペソ以下の債務者が対象となっているが、(国立銀行による利息計算も考慮すれば)40万ペソまでの債務者が含まれる」などと評価する声が上がっている。
◎チリ農牧庁、空から密輸を監視
8月13日チリ農牧庁(SAG)は、2005年夏期の山岳放牧期間中において、アンデス山脈側の国境からの家畜の密輸を監視するため、小型の無人飛行機を飛ばす実証試験を開始する予定であると発表した。この開発プロジェクトには、チリ空軍航空応用科学アカデミー、コンセプション大学数学物理学部衛星隔測研究所などが携わり、システムなどを共同開発している。
「畜産の情報【海外編】2003年5月号グラビア」において、SAGが山岳放牧を管理して隣国からの口蹄疫侵入を防ぐ取り組みをすでに紹介しているが、技術を駆使しさらにその取り組みを強化する手段を開発しているところである。
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