QLD州政府、NLIS義務化の骨子を発表     ● 豪 州


QLD州、一転して例外なき義務化方針へ

 クインズランド(QLD)州政府のパラジュック第1次産業相は9月2日、電子標識(耳標)による牛の個体識別制度であるNLISの同州における義務化について、2005年7月1日から段階的に実施することを発表した。焦点になっていたと畜場直行牛などに対する電子耳標装着を免除する例外措置については、最終的にこれを盛り込まないことを基本にしたものとなっている。

 NLISは連邦・州政府による第一次産業大臣会議において、2005年7月からの全国的な義務化実施が合意されており、先行して実施したビクトリア州に加え、ニュ−サウスウェールズ州などでも2004年7月から段階的な実施を開始している。その中でも、例外措置の導入が前提となって全国的な義務化が合意された経緯もあり、豪州最大の牛の飼養頭数を持つQLD州の実施計画策定の動向が注目されていた(詳細は「畜産の情報(海外編)」2004年7月号特別レポート参照)。

今回の発表に至るには曲折も

 同州では、実施計画案策定のため、2004年4月にQLD州NLIS実行委員会が設置され、7月1日の策定を目標に検討を開始した。その議論の過程において、例外措置導入の是非をめぐり、生産サイドと流通サイドで激しい議論が行われ、実行委員会の実施計画案は当初予定を2カ月近く遅れた8月24日に公表された。その案は、大筋において第1次産業大臣会議で合意されたと畜場直行牛などへのNLIS耳標装着を免除する例外措置を活用する内容のものであった。

 しかしながら、同州政府のビーティー首相(同相は貿易相も兼ねる)が同25日、NLISについて、例外措置を認めずに完全義務化を実施する意向を示したため、生産者サイドから、義務化導入の経緯に反するとの批判が挙がっていた。

 その後、州政府首脳と生産者団体間で調整がとられた結果、今回の発表になったと伝えられている。

義務化完了は2007年の予定

 詳細な計画は明らかではないが、パラジュク第1次産業相の発表によれば、次のように段階的な実施を行うことになる。

 (1) 2005年7月1日から、農場から移動するすべての牛はその移動について中央データベースに記録される(注1)。農場から直接と畜場または生体輸出に向けられる牛以外のすべての牛は、NLIS耳標が装着される(注2)。

 (注1:この段階で、耳標装着が免除されている牛についても、既存の制度(農場識別番号(PIC)や全国出荷者証明書(NVD)など)によって出荷ごとにデータベースへの報告を実施するとみられる。)
 (注2:この段階では、(2)との関連から農場間の移動には耳標装着は免除されるとみられる。)

 (2) 2006年7月1日から、出生農場から直接と畜場または生体輸出に向けられる牛以外のすべての牛は、NLIS耳標が装着される。

 (3) 2007年7月1日または市場の要請があればそれより早い時期から、出生農場から直接と畜場または生体輸出に向けられる牛についても、NLIS耳標が装着される。

 以上のように、最終的に流通サイドの要請をくんだ完全義務化を指向するものであるが、その実施については生産サイドに配慮して十分な移行期間を設けている。

 なお、QLD州政府の2004/05年度予算において、NLIS実施関連経費として440万豪ドル(3億3,880万円:1豪ドル=77円)が計上されたが、生産者サイドから要望の多い耳標代に対する補助は対象となっていない。


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