ジャカルタで経済閣僚会合開催
ジャカルタで9月2日から開催されたASEAN経済閣僚会合の場で、日本とASEANとの包括自由貿易協定(FTA)の交渉開始時期と自由化の完了期限が示されたのをはじめ、個別ではタイ、フィリピン、マレーシアとの2国間協議が進められるなど、各種協議が活発化している。
また、8月には、ASEAN自由貿易地域(AFTA)実施完了期限は当初2015年までとされていたものの、完了期限を3年前倒しすることで加盟各国が同意したとされる。なお域内関税率は既にほとんどの品目で下がっており、農業分野については域内で競合する品目が多いことなどから貿易量は低水準である。
タイとのEPAに関する反応
域内各国でFTAや経済連携協定(EPA)締結への動きが活発化する中、タイでは農産品の輸出品目の中に相手国に関税撤廃を求める品目を多く抱えており、厳しい状況ではあるものの、日本をはじめ世界各国・地域との交渉を活発化させている。
日本との交渉に関するタイ国内の反応としては、農産物に関する合意が得られるまでは日本側の国内調整を静観すべきという意見や、今月13日から開催された第4回協議のタイ側交渉団長である外務省副次官のコメントによると、「タイは米、タピオカ、鶏肉、砂糖など数品目の農産物の自由化を求めており、現在タイの農産物は日本への輸出が難しい(鳥インフルエンザの影響などを受けて)状況に置かれている。FTAなどの交渉は本来両者が利益を得られるべきものであり、日本の農業に損害を与えるつもりはないが、この経済連携協定により日本へのタイの農産品輸出を確たるものとしたい」とし、疾病対策などを含めたより一層のわが国の協力と輸出農産品に対する配慮を求めることをにおわせている。
カンボジア、WTO加盟へ
一方、昨年9月にカンクンで開催されたWTO閣僚会合でカンボジアはWTO加盟承認がなされたものの、昨年来続いていた同国内の政局の混乱により国会承認手続きが滞っていた。しかし8月の新内閣発足に伴い同月、国会によって加盟議定書が批准されたため、近日中に正式加盟国となる見通しである。
同国が比較的優位を持つとされる主な輸出産業としては労働集約産業である衣類のほか、木材や天然ゴムなど1次産品であり、豊富な土地と水資源を背景として、農業、特に米と漁業産品に潜在的な輸出の可能性がある。
畜産分野では近年、内外価格差による生体牛の近隣諸国への流出と、主にベトナムからの豚の流入(密輸)が問題となっているが、WTO新規加盟に関する国内畜産業の反応は鈍く、政府担当部局は現在、新規加盟に伴う調整作業に着手しようとしている。
なお、ASEAN加盟各国のうちWTO未加盟国はカンボジアのほか、ベトナム、ラオスが挙げられるが、両国ともに現在、加盟申請中である。
ベトナムは95年の加盟申請後8回の作業部会を重ねているものの、高水準の農業輸出補助金撤廃を迫られているほか、現加盟国から求められているWTOプラスに関する問題、国内法整備の遅延、などにより交渉が難航している。このため、2005年当初からの正式加盟目標の達成が危ぶまれている。
畜産関連のセンシティブ品目に関する個別要求としてはNZからの乳製品などが挙げられ、国内農業振興政策の目玉とする酪農・乳業との調整で困難な状況が予測される。
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