順調な豚肉調製品輸出            ● タ イ


順調な豚肉調製品輸出

 タイ畜産局の統計数値によると、1月〜5月の豚肉調製品の輸出量は約1,700トンで、前年同期の約1,000トンに比べて大きく増加している。このほとんどは日本への輸出である。一方、同期の生鮮豚肉の輸出量は約2,100トンで、前年同期の約4,200トンに比べて大きく減少した。この理由について、高病原性鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の影響で代替需要が発生し、生鮮肉に関しては国内への供給が優先されたと見られている。ちなみに輸出品の平均価格は調製品が1トン当たり約21万バーツ(55万円、1バーツ=2.6円)に対して生鮮豚肉が約6万5千バーツ(17万円)と3倍以上の開きがあり、付加価値の高い調製品の原料については代替需要の影響を受けなかったものと考えられる。

大きく変動した豚肉価格

 同国農業協同組合相と同商務省の統計数値である豚の農家販売価格と豚肉の小売価格は鳥インフルエンザが確認された後の2月から上昇し、4月には前年同月比でそれぞれ150%を超えるピークを記録し、5月以降値を下げたものの、7月時点でもそれぞれ前年同月比で110%水準となっている。このことに関して養豚業者協会(SRA)は、当初は鳥インフルエンザによって代替需要が発生したものの、輸出先から返戻された鶏肉が逆に豚肉の需要を侵食したとしている。また、飼料価格が上昇しており、経営的に苦しくなった養豚業者が出荷を早め、供給が増加したため、価格が戻ったと説明している。

成長促進薬剤の問題

 6月中旬、全国養豚協会(NPBA)はタクシン首相と関係閣僚に対して、「養豚産業に対する成長促進薬の禁止キャンペーンを継続して欲しい」との申入れを行った。このことは、一時は下火になったとみられていた養豚への違法薬品の使用が再び始まっているとされているためであり、政府の食品安全政策に照らして規制の強化を要望したものである。対象となっている違法薬品は、薬理作用からベータアゴニストと通称され、豚の赤身を増やし、歩留まりを改善し、生産コストを下げると言われている。

有効な一貫生産

 これまで、タイから日本向けの食肉調製品は鶏肉を原料にしたものが中心であり、豚肉調製品の輸出に関しては、米国や中国などに比べて少量にとどまっていた。 

 このような中、日本の大手冷凍食品会社は同国の農産企業であるベタグロ社のSPF(特定病原菌不在)技術を用いた養豚の一貫生産体制から供給される豚肉を使って、とんかつなどの豚肉調製品の日本への販売を目的に合併会社を設立しており、2005年中にも販売を開始するとしている。(「海外駐在員情報」通巻603号参照)

 この一貫生産の体制の導入は、原料を市場から購入する場合の価格変動の回避と、同国が口蹄疫の常在国であることに加えて、豚の流通にミドルマンといわれる仲買業者が介在することもあって、原料となる豚のトレーサビリティの確保が困難な現状への対応であると考えられる。

 同国で生産される豚肉調製品のほとんどは、日本人向けの仕様で作られ、日本の市場と消費者に直結している対日輸出型製品と言われているが、今後、一貫生産を導入することにより、同国の廉価な労働力を利用した労働集約的製造を行う日本向け輸出のさらなる可能性を模索し始めた。


元のページに戻る