加工仕向け食肉需給がひっ迫      ● インドネシア


加工仕向けの食肉価格が上昇

 インドネシアでは年明けに発生が確認された鳥インフルエンザ(AI)や北米におけるBSE発生の影響などにより、今年5月以降、主に加工原料用の鶏肉や牛肉の供給不足から食肉価格が高騰している。

大量とう汰により供給が減少

 鶏肉は米国およびカナダから外食産業仕向けのもも肉などの冷凍部分肉を少量輸入しており、2003年には両国合わせて205トンを輸入している。ただし同年のブロイラー国内生産量は82万トン(速報値)とされ、大部分は国産で賄われている。

 AI発生に伴い同国でも防疫措置によるとう汰を含む家きん類の被害は740万羽を超えるとも言われており、インドネシア食肉加工協会によると、へい死やとう汰による羽数減少に起因する供給不足で加工鶏肉価格は1万ルピア(118円:1,000ルピア=11.8円)程度値上がりし、現在1キログラム当たり2万8千ルピア(330円)程度となっている。

BSEによる禁輸の影響

 牛肉については口蹄疫などに関し清浄国である豪州とNZから多くの生体・牛肉を輸入しているが、内臓や加工仕向けのくず肉については米国からも多く輸入している。2003年実績では冷凍レバーが6,300トン、冷凍くず肉が5,800トンとなっている。同国の米国産牛肉に関する禁輸措置は5月31日付けで解除されたが、低リスク部位とされる骨なし肉に限定されているため、加工品仕向けの原料肉が品薄となり、加工牛肉価格が9千ルピア(106円)程度値上がりし、現在1キログラム当たり約2万5千ルピア(295円)となっている。

特定品目に対する関税措置の強化を検討

 同国は肉牛振興政策として将来的には特定国からの輸入に依存する体質からの脱却を目指しているものの、好調な需要の伸びを受けて当面はフィードロットなどによる牛肉供給体勢を維持する必要に迫られており、フィードロット産業を振興する理由として、出荷までに輸出国で使用されたホルモン剤などの薬物を代謝させるための緩衝期間としての役割や、国内労働者に対する雇用確保の目的などを強調している。しかし、国内産牛肉と輸入品との価格差などによってと場直行牛として輸入されるケースが後を絶たない現状を受けて、政府は生体重による肥育素牛の輸入関税率の差別化を行い、国内フィードロット産業の健全化を図りたいとし、検討を開始している。

 政府が示すフィードロット仕向けの輸入生体牛基準体重は350キログラム以下とされており、2003年の牛肉生産量が全体で35万2千トンであるのに対し、同年の350キログラム以下の生体牛輸入は豪州産が生体重5万6,700トン相当、それ以外のものが同じく1万6,400トンとされている。現在肥育素牛価格は生体重1キログラム当たり1万5,000ルピア(177円)、肥育コストが同8,000ルピア(94円)、3カ月肥育後の出荷時価格が同1万2,500ルピア(148円)程度とされ、肥育収益を計上するのが困難なことなどから、350キログラムを超える肉牛が多く不正輸入されているとされる。

 また最近の牛肉価格は1キログラム当たり国産が3万6千ルピア(425円)、輸入品が2万8千ルピア(330円)程度となっている。

 一方、鶏肉の部分肉輸入に際しては、ハラル(イスラムの教義に則った適切なと畜方法)認証に関する透明性を確保することなどを目的に関税率の変更が検討されている。従来から部分肉で輸入される鶏肉のハラル認証取得は困難であり、このことが、内外価格差が大きいにもかかわらず国内での流通が限定的であった一因と見られる。

 現在実行関税率については家きん肉は一律5%で、それぞれ付加価値税10%が別途課税されている。


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