EU、2011年まで生乳生産は堅調に推移


◇絵でみる需給動向◇


●●●欧州委員会、農畜産物の需給予測を公表 ●●●

 欧州委員会は、2004年から2011年におけるEU25カ国(EU25)の主要農畜産物の需給に関する中期予測を公表した。この予測は、2004年6月末までに入手可能な統計に基づいて本年3月に公表された「需給予測」を更新したものである。また、今回の需給予測の前提条件は、(1)2003年6月に合意した共通農業政策(CAP)改革で導入された生産と切り離した単一の直接支払いが、加盟国別に選択可能なオプションとともに実施されること、(2)新規加盟国(NMS10)の新たな直接支払いについては、スロベニアおよびマルタでは2007年から、また、そのほかの8カ国では2009年から段階的に実施されること、(3)ウルグアイ・ラウンド農業合意(UR合意)の条件、特に市場アクセスや輸出補助金について2011年まで現在の条件を維持すること、(4)本年6月までに締結した特に先進国との貿易協定は今後とも継続すること−などである。

●●●EU25、2011年生乳生産量は1億4,460万トン●●●

 この需給予測によると、EU15カ国(EU15)の生乳生産量は生乳生産割当(クオータ)制度の実施により安定的に推移し、2011年には生乳生産枠のわずかな増加により、2004年と比べて1.2%増の1億2,290万トンと見込まれている。また、NMS10においても、生乳生産量は2011年まで約2,200万トンで安定的に推移し、EU25全体では同0.9%増の1億4,460万トンと見込まれている。生乳の出荷率をみると、NMS10では小規模酪農家による自家消費や、乳業メーカーを介さない直接販売が生産量全体の20%以上を占めている現状からEU15に比べて出荷率は低くなっている。今後EU拡大による経済の発展に伴い、自家消費生産形態の農家は減少し、2011年におけるEU25全体の出荷量は同2.9%増の1億3,440万トン、また、出荷率は2004年の91.1%から同1.9ポイント増の93.0%と見込まれている。

 乳用経産牛の飼養頭数をみると、EU15、NMS10ともに減少傾向で推移し、2011年にはEU25全体で、同8.6%減の2,130万頭となるが、生乳生産枠の増加によりこれまでの長期間にわたる飼養頭数の減少度合いはいくらか緩やかになると見込まれている。なお、EU25における1頭当たりの泌乳量は毎年増加傾向で推移し、2011年には同11.0%増の6,747キログラムとなるが、EU15とNMS10との格差は2011年においても1,752キログラムと依然大きいものと見込まれている。


●●●チーズ生産は増加、バター・脱脂粉乳は減少見込み●●●

 主要乳製品の需給予測では、EU25におけるチーズの生産量は、消費量とともに2011年まで毎年着実に増加し、2011年の生産量は2004年と比べて8.2%増の917万5千トン、消費量は同8.5%増の872万9千トン(1人当たりの消費量は同6.3%増の18.7キログラム)と見込まれ、特にNMS10においては、2011年の1人当たりの消費量が同24.6%増の15.7キログラムとその増加が顕著である。

 一方、バター生産量は、CAP改革で本年7月1日から実施されている介入価格の引き下げなどにより減少傾向で推移し、EU25における2011年の生産量は同13.2%減の184万6千トン、消費量についても同6.5%減の176万7千トン(1人当たりの消費量は同8.2%減の3.79キログラム)と見込まれている。また、脱脂粉乳についても、2011年の生産量は同28.2%減の90万3千トン、消費量は同26.3%減の76万5千トンと大幅な減少が見込まれている。なお、欧州委員会によると、今後、生乳生産枠は増加するが、バターや脱脂粉乳の生産量の減少傾向に歯止めをかけることは期待できず、チーズなど付加価値の高い乳製品への生産シフトが一層加速するものと見込まれている。


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