生鮮肉の輸出が好調、特にロシア向けが急増
7月20日にアルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)が公表した2004年上半期の牛肉輸出量(製品重量ベース。生鮮肉、加工肉および内臓を含む)は、前年同期131,548トンを50.2%上回る197,636トン、輸出額は同2億6,242万ドル(約291億円、1ドル=111円)を72.2%上回る4億5,192万ドル(約502億円)となった。
特に生鮮肉(EU向け高級牛肉枠(ヒルトン枠)を除く。以下同じ)の輸出は、前年上半期59,456トンが当年同期106,406トンと79.0%増、輸出額は同9,753万ドル(約108億円)が同2億1,808万ドル(約242億円)、123.6%増と前年同期を大幅に上回っており、輸出量の増加に比べ輸出額の増加が顕著となっている。これは1トン当たりの価格が前年同期は1,640ドルであったものが、当年同期には2,050ドルと25.0%上昇していることが要因となっている。2001年の口蹄疫発生や2002年の経済危機の影響が見られる以前の同価格は2,300ドル強であったが、2002年は同1,362ドルに落ち込んでおり、その後輸出価格は回復傾向にあることがうかがえる。またSENASAは特筆すべき事項としてロシアへの輸出を挙げている。前年上半期ロシアへは5,005トン、556万ドル(約6億円)が輸出されていたが、当年同期には26,091トン、3,894万ドル(約43億円)と急増し、生鮮肉の全輸出量で25%、輸出額で18%を占める最も主要な輸出市場となった。
(→生鮮肉輸出の増加理由について、公的コメントはない。新聞では衛生状態の向上、米国BSEによる代替と言われている。)
期待されていたチリ市場が解禁
SENASAは2003年9月5日、アルゼンチン北部のサルタ州で豚において口蹄疫発生が確認されたことを国際獣疫事務局(OIE)に報告し、これによりチリはアルゼンチン産牛肉などの輸入を一時停止すると発表した。その後、両国は交渉し2004年4月末までに輸入再開手続きを終わらせるよう努めることが衛生当局間で合意されていた(「畜産の情報」海外編、2004年6月号、p23参照)。
しかし、畜産関係者の期待とは裏腹に6月になっても輸入再開には至らず、7月12日付けの官報でチリ農牧庁(SAG)決議第2213号(2004年7月6日付け)が公布され、ようやく輸入が解禁された。チリ市場はアルゼンチンにとって重要な市場であるが、この時点でアルゼンチン産牛肉は75カ国・地域から輸入が許可されており、関係者からはチリ市場が解禁したからと言って、輸出量や1トン当たり価格が大きく上昇することはないのではないかとも言われている。
◎亜国養豚協会、伯産豚肉の輸入制限を要請
7月15日アルゼンチン養豚協会(AAPP)は、大統領、経済生産省、農牧水産食糧庁に、ブラジル産豚肉に対して輸入制限を課すよう要請したことを公表した。
両国の民間セクターは5月からブラジル産豚肉に最低価格を適用することで合意していたが(本紙通巻第626号を参照)、当プレスリリースではハム用のものの最低価格は1トン当たり1,850ドルであるにもかかわらず同1,300ドルで輸入されているとし、ブラジル側が合意内容を無視していると非難している。
7月上旬から2国間において、新聞紙上では「冷蔵庫戦争」「家電製品戦争」などと呼ばれる貿易問題が発生している。これは輸入が増加しているブラジル製家電製品など(冷蔵庫、レンジ、洗濯機)に対してアルゼンチンが、輸入手続の複雑化を可能とする経済生産省決議第444/2004号(2004年7月5日付け)を制定してけん制する姿勢を見せたことによる。AAPPは豚肉も国内産業への影響が大きいとして、その対象に含めるように要請したところである。
報道によれば、レンジと冷蔵庫については、民間セクターにおいて輸入枠を設けることで合意したようで、工業・商業・中小企業庁決議第177/2004号(2004年7月21日付け)において、洗濯機のみが決議第444/2004号の対象に変更されている(なお9月9日現在、決議第444/2004号のさらなる変更はみられないところである。)。
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