ブラジルの養豚生産をめぐる情勢


豚肉の取引価格上昇により生産増加を予測

 7月23日、養豚の主要な生産地であるサンタカタリナ州の農業経済企画院(ICEPA)は、最近の養豚生産の低迷により豚肉価格が上昇傾向で推移しており、それにより生産意欲が高まり短期的に生産が増加して将来的に価格が下落する可能性を示唆するレポートを発表した。内容は以下の通り。

 「過去1年間で、南部地方※1の豚と畜頭数は、2,040万頭から7.4%減少し 1,890万頭となり、結果として地域内の豚肉生産量は12万4千トン減少した。この減少傾向は2004年上半期中も続いており、2003年同期のと畜頭数980万頭から 6.3%減少して920万頭となった。これは2002年及び2003年の一部にみられた市場の停滞※2および生産コストの上昇※3に起因している。

 南部地方の生産量は需要量に見合い、結果として価格が堅調に維持され、と畜用豚を確保するため激しいパッカー間の競争が起こり、高値傾向をさらに助長することになる。この高い豚肉価格と低い生産コストのため増頭が進んでおり、今後数カ月間に段階的に生産量が増加し、年末に向けて余剰となる可能性がある。

 また良好な輸出状況、経済回復に伴う国内消費の増加、生産性の向上と平均重量の増加などは豚肉生産の回復を予想させるが、逆にこのような情勢は豚肉価格の低迷を再び招き、特に2005年下半期にそれが起こる可能性が予測される」。

配合飼料の無税適用除外により生産低下を危ぐ

 7月23日付け法律第10925号により、国内市場への販売に際し"社会負担金"のPIS※4およびCOFINS※5が無税となる品目などが決定された。これによれば、基礎的食料であるコメ、フェイジョン豆、卵、マンジョカ粉などともに、肥料、ミネラル性の土壌改良剤、家畜用ワクチ 刀A農薬、作付けに用いる種子と苗などが無税の対象となった。一方、配合飼料、濃厚飼料、ミネラルサプリメントなどについては、連邦議会で無税の対象として承認されたが、大統領が「公共の利益に反するため」として拒否権を発動したことにより、対象とはならなかったと報道されている。これに対しブラジル全国農業連盟(CNA)などは、肉用牛生産にとってミネラルは重要であり、また養豚および養鶏の生産にとって配合飼料は不可欠な要素で、競争力の低下、特に中小規模農家への打撃が大きく、課税分がダイレクトに価格へ反映され、強いては生産の低下に結びつくのではないかと危ぐしている。

 PISおよびCOFINSはともに"社会負担金"として他の連邦税とともに連邦政府に管轄され、各流通段階においてPIS:0.65%、COFINS:3.00%を納めていたが、近年の改定で最終段階において納付する場合、合計して9.25%(PIS:1.65%、CONFIS:7.60%。ただし各流通段階において課税される9.25%分を控除することができる)となった。

輸出量は減少するも輸出額は増加

 このような中、豚肉の2004年上半期の輸出量は前年同期の23万4,809トンを4.8%下回る22万3,612トンに、輸出額は同2億3,936万ドル(約263億円、1ドル=110円)を27.0%上回る3億392万ドル(約334億円)となった。これはロシア向け輸出量が輸入枠の設定により減少したが、その反面輸出単価が上昇したこと、また全般的に価格の高いカット肉の輸出が増えたことなどによるとブラジル豚肉生産輸出業協会(ABIPECS)では分析している。生産意欲を促進する要因と減退する要因が同時期に起こっているため、今後の養豚生産の動向が注目される。

※1:サンタカタリナ州、リオグランデドスル州、パラナ州の3州を指し、2003年の全豚肉生産量の44%を占める。
※2:豚肉の無統制な生産増加の中で、輸出は大幅に増加したものの、国内市場は供給過剰となった。
※3:トウモロコシの減産および需要増による供給不足、レアルの下落に伴い輸出価格に影響される大豆かす価格の上昇により飼料価格が上昇した。
※4:社会統合計画:法人の売上高に対して課税され、低所得者への金銭的援助、失業保険の財源で、社会福祉政策や社会年金にも充当できる負担金。
※5:社会保険融資負担金:法人の売上高に対して課税され、年金や社会保険などの社会保障や福祉に充てられる負担金。


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