WTO枠組み合意を歓迎       ● タ イ・フィリピン


 8月1日にWTO交渉の枠組みに関する合意が、参加する147カ国よってなされたが、東アジアでも農産物貿易に積極的なタイとフィリピンでは今回の合意を次のように評価している。

FTA交渉も推進(タイ)

 タイ商務省の見解は、関税の引下げと輸出補助金の廃止などにより、農産物のなかでも、特に米、砂糖そして鶏肉の輸出が加速されることになる一方、輸入原料を加工して再輸出するような特定製品に関しては原料コストが上昇することになるが、全体としては大きなメリットであるとしている。タイにとっての重要な産物である米と砂糖に関連する農家への多額の補助金が米国とEUでは支出されており、その結果、タイの農業は大きな負の影響を受けてきたので、今回の合意は歓迎されるというものである。

 また、同国農業協同組合省の次官に対する、WTOの進展により、現在進められている自由貿易(FTA)交渉がスローダウンするのではないかとの問いに対し、同次官は、今回の合意内容の実現については、今後、長期にわたる交渉の末になされるものと見込まれるが、それまで農家の利益を先延ばしにすることはできないため、現在交渉中の米国をはじめとする各国とのFTA交渉は、予定通り推進するとしている。また、関税の引下げと輸出補助金の廃止などで、農産物価格が現在の水準から3〜5%上昇すると見込まれる一方、大豆やトウモロコシの価格上昇の影響を飼料価格の上昇という形で畜産分野が受けると商務省と同様の見解を示している。

 貿易関係団体もこれらの見方と同じであるが、今後の交渉については、関税外障壁の問題に関してもっと深い検討が必要であるとしている。またセーフガードは工業製品のみならず、農産物についても必要としている。

途上国農家の勝利(フィリピン)

 フィリピン農務相は今回のWTO枠組み合意に関して、満足できる旨の声明を発表した。それによれば、交渉の勝利者はフィリピンおよび他の発展途上国の農家であるとし、農家の利益に一致することを強調した。合意の内容に関しては、特に重要品目に関して、その選択範囲に柔軟性を持たせられたことが評価されるとしている。また、今後の交渉の最終目標は農家の生活水準の改善であるとし、交渉によって農家経済を向上させることによって農家を貧困から救済することが目的であるとしている。なお、輸出補助金は貿易を歪めているとともに、高いレベルの貿易歪曲的な国内支持は大きく引き下げられるべきであり、枠組み合意の実施はこれを解消する大きなチャンスと認識しているが、実施の期日が定められておらず、 アれからの交渉が非常に重要であるとしている。

 一方、貿易の自由化に反対する同国の民間組織は、今回の枠組み合意に関して、農家への補助を途上国も先進国と同じレベルで一律に削減することは、先進国と途上国の生産性の格差を無視したものであり、特に貧困にあえぐ同国の農家への影響は大きいため、農家への補助の削減は先進国のみに摘要されるべきであるとしている。


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