畜産業の輸入依存体質脱却の取り組み    ● マレーシア


畜産物関連は貿易赤字を計上

 マレーシア農業・農業産業相によると、同国の2003年における食料部門の貿易赤字は総額43億3,700万リンギ(1,257億7,300万円:1リンギ=29円)に上るとされた。その内訳は畜産用飼料15億800万リンギ(437億3,200万円)、乳製品8億8,100万リンギ(255億4,900万円)、食肉および食肉加工品が6億5,600万リンギ(190億2,400万円)などとなっており、畜産部門がその多くを占める。その他の赤字品目としては穀類、野菜、砂糖、果物などとされる。一方、生体家畜や鶏卵部門では、それぞれ1億4,900万リンギ(43億2,100万円)、1億5,400万リンギ(44億6,600万円)の黒字を計上したとされた。

 同国が2010年を目標とする第3次マレーシア農業政策では、計画最終年までに農業部門の貿易黒字額を総額12億1,000万リンギ(350億9,000万円)にまで引き上げ、現在の輸入品への依存体質からの脱却を図るとしている。

輸出振興への取り組み

 農業・農業産業省の説明によると、食料自給体制の確立、ひいては農水産品を輸出産業として振興するための具体策として、農畜産物品目ごとの生産団地化を推進すること、長年の懸案である遊休地の活性化、付加価値化の推進などを挙げている。

 付加価値化という点で、同国では現在特定農場に対するオーガニックスキームと呼ばれる認定制による農産品の付加価値化、そして農業相が5月に発表したマレーシアズ・ベストと呼ばれる、熱帯果実に対する新たな品質認定制度などを推進しており、将来的には畜産物を含む多くの農産品へこれら認定制度の拡大を図るとしている。

 また、農業関連産業に対する投資環境を改善するため、財務省は7月中旬、農業調査および開発に従事する企業に対する税制措置を緩和するとした。

 一方、農業・農業産業省は6月下旬からアジア各地で鳥インフルエンザが再発していることを受け、国内における発生予防・監視について厳重警戒態勢を呼びかけるとともに、これを関連製品輸出の好機として、家きん関連製品の輸出に積極姿勢を示している。

ハラル製品製造団地の推進

 また、イスラム教徒を多く抱える同国では、輸出産業振興の一環として、各州にハラル(イスラムの教義に従い適切に製造された製品)製品製造団地の整備計画を進めている。

 世界全体で年間約3,500億米ドル(39兆円、1米ドル=111円)に達するとも言われるハラル食品市場はニッチ市場として将来性が見込まれており、現在フィリピン、タイ、英国、豪州などが市場開拓に取り組んでいるとされる。

 しかし、豪州など非イスラム教国から直接ハラル食品を輸出する際はハラル認証の厳密性という意味での信用面で問題が生じるケースがあり、マレーシア政府は同国がハラル食品をイスラム教国へ輸出する中継国となることで輸出国への信頼を確保できるとし、これにより生じるビジネスチャンスは大きいとして期待を寄せている。

 同国は、統一規格の存在しないハラル市場を牽引する主導国的役割を目指しており、規格統一の際には、HACCPなどの国際的な衛生管理を行うことが必要であるとしている。

 同国貿易産業省の発表によると、現在、ケダ、パハン、ネグリセンビラン、スランゴール各州の4カ所が操業に向けて準備中であるほか、ジョホール、ペラ州でも同様のハラルセンターの設置を計画しているとされる。

 これらのプロジェクトのうち、ペラ州では豪州西部の食品生産者で組織されるWGCL(Western Australian Wheat-belt Growers Cooperatives Ltd)と、州開発公社の合弁により主に輸出用食品製造基地としてハラル食品団地を設置するとしている。WGCLは2004年末を目標に、この食品団地に豪州産冷蔵牛肉およびラム肉を供給したいとしている。


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