鳥インフルエンザ再発への警戒
マレーシア保健省は、昨年11月22日以降、国内において新たな鳥インフルエンザの発生がないことを受け、1月5日に制圧宣言を行った。しかしながら、その後もベトナムで継続して死者が発生するとともにタイでも発生が散発している。
特にタイは国境を接する隣国であるとともに、1月下旬に北部のウタイタニ県において野生のハトに鳥インフルエンザウイルスが確認されたことにより、500羽が処分されている。
鳥インフルエンザウイルスの国内の侵入に関しては、密貿易による生体などの持ち込みのほかに渡り鳥などの野鳥の移動に伴うものが原因とされており、その防止は困難で、不幸にも発生した場合、早期に発見して対処することがその後のまん延防止の要となっている。
医療機関を活用
このような状況に対処するため、1月28日、同省は、鳥インフルエンザ発生の監視体制の拡充を医療機関の活動を通じて行うと発表した。これは、全国に135カ所の国立病院と約4千の民間医療機関に対して、流感の症状である喉の痛み、発熱、咳などを訴える外来患者の割合が通常より増加した場合に、州の機関に届け出ることを義務付け、その後州から国に報告するという受動的調査のネットワークを構築するものである。
所定の症状の外来患者の増加が報告された場合には、外来患者が居住する地域一帯を州の衛生当局と家畜衛生当局の担当者が防護装備を身に付けて調査するとし、現在、保健省と獣医局が調整を進めているとしている。
なお、昨年1月にタイなどで鳥インフルエンザが確認されたおり、マレーシアも防疫対策を実施しようとしたが、当時は家きんの飼養状況の把握さえも十分に行われていなかった。
その後、8月に北部ケランタン州で鳥インフルエンザが確認され、防疫対策が実施されて現在に至っている。その間に、養鶏場3,790(うち採卵養鶏425)、アヒル農場241、ウズラ農場124、その他の鳥農場277が登録を完了しており、防疫に関する状況は改善されている。
◎スマトラ島沖地震・津波の影響
昨年12月26日に発生した地震と津波によるマレーシアでの農水産業における被害について、マレーシア農業省は、復興に必要な額は5千万リンギ(13億5千万円:1リンギ=27円)以上になると発表した。
畜産関係の大きな被害は報告されていないが、水産関係と水田に大きな被害が生じている。水産では120カ所の養殖施設などが被災し被害総額は2千6百万リンギ(7億円)になるとしている。特にペナン州に被害が集中している。
また、水田に海水が流入したため、土壌の塩分濃度が上昇し、稲の作付けができない地域が発生している。これに対して政府は、塩分濃度が減少するまで、作物の変更や家きんの飼養などを薦めている。一方、この津波による食肉などの小売価格への影響をみると、鶏肉価格が上昇している一方で魚の価格が下がっている。鶏肉価格の上昇は、旧正月に向けた需要の高まりばかりでなく、津波によって海での犠牲者が多く発生したため、消費者が魚離れを起こし、鶏肉に代替需要が発生したためとされている。1月下旬にかけて鶏肉は統制価格上限の1キログラム当たり6リンギ(162円)に迫っている一方、サワラなどの小売価格は津波発生前に比べて3割ほど下落している。
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