AIワクチン使用実績などを公表     ● インドネシア


2004年のAI対策実績を公表

 インドネシア農業省畜産総局は昨年12月、2004年の鳥インフルエンザ(AI)対策の遂行状況を発表した。摘発とう汰を対策の基本とする東南アジア各国の中でワクチンの戦略的使用を併せた清浄化計画を推進し、昨年10月に東・中央ジャワ州などでOIE(国際獣疫事務局)に対し発生報告を行った以降新たな発生が確認されていない同国であるが、政府による清浄化対策では予算や人材の不足から当初の目標を達成するには至っていない。

 

被害状況

 畜産総局発表によると、同国で鳥インフルエンザが発生し始めたとされる2003年8月前後から2004年12月初旬現在までの被害状況としては16州の101県での死亡羽数は889万羽、モニタリング調査による推定死亡羽数は1,624万羽と報告された。(ただしこの羽数にはニューカッスル病など類似の臨床症状を呈して死亡したものや、撲滅対策によるとう汰羽数を含む)また、死亡羽数は発生以来、毎月減少傾向で推移しているとされた。

 

ワクチン使用状況

 12月8日現在、政府のワクチネーション対策の目標達成率は40.5%、約1億1,900万ドースとされており、ワクチネーションに関する予算は中央政府から配分されることとなっていたが、実際に予算要求を行った地方政府などは9州(97地域)にとどまっている。政府はワクチン使用指針として「汚染地域」(病理検査でウイルスの存在が確認された患畜の飼養されていた地域)にその使用を限定したものの、地方家畜疾病監視センター(BPPVR)などによって行われた免疫血清学的検査による追跡調査によると、ワクチン使用が許可されていない清浄地域のサンプルから、血清中の抗体が検出されたものが多数存在していると報告された。このことは同国中央政府のワクチネーション対策予算が非常に限定されたものであり、かつ対応が遅れがちなため、生産者は市販のワクチンを政府の対策とは別に適宜投与している現状を検証した結果となっている。なおBPPVRなどによる追跡調査による抽出サンプル数は全国で7,547検体、うち免疫血清学的検査(HA、HI※ 試験など)によって陰性とされたものは2,104検体とされている。

 また世界保健機関(WHO)の鳥インフルエンザ検査委託機関である、香港大学によるウイルスタイプ同定検査によると、PCR法を用いた検査結果から血清亜型H5N1とされ、一部検体からタイやベトナムで発見されているものと同タイプのウイルスが見つかった。

 

生産者補償実績

 撲滅対策により飼養家きんのとう汰処分を受けた生産者に対する直接補償として、補償対象期間2004年1月29日から7月29日までの発生に対し支払われた補償額は約136億ルピア(1億5,400万円:10,000ルピア=113円)、これは同年3月に発表された拠出予定総額800億ルピア(約9億円)に比べわずか17%となっている。また、対象生産者は8州28県の4,110件で、その約8割は中央・東ジャワ州に集中している。予算不足による生産者補償の不徹底は同国で摘発とう汰による対策を実施する上での制限要因となり、多くの生産者は発症が疑われた場合出荷を急いだとされる。

※ HA:尿膜腔内接種法によるウイルス分離
  HI :血球凝集抑制試験


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