肉牛取引課徴金の引き上げを勧告 ● 豪 州


1頭当たり5豪ドルへの引き上げを勧告

 豪州国内の牛肉産業関係者で組織する牛肉産業資金拠出運営委員会(BIFSC)は先ごろ、生産者が肉牛の取引を行う際に課される肉牛取引課徴金について、現行の1頭当たり3.5豪ドル(301円:1豪ドル=86円)から5.0豪ドル(430円)に引き上げる内容を含んだ資金拠出に関する勧告書を発表した。

  勧告書では、肉牛取引課徴金引き上げ理由の一つとして、米国やブラジル産牛肉との競合を踏まえた上で、豪州産牛肉の輸出競争力強化のためにはさらなる販売促進が欠かせないとしており、国内外を含め現在の2,200万豪ドル(18億9,200万円)の販売促進に関する予算を、ほぼ2倍の4,420万豪ドル(38億120万円)に拡大する必要があるとしている。

  BIFSCは、2004年4月、牛肉産業の将来計画と資金拠出の見直しなどを目的に独立した組織として設置され、肉牛生産者を委員長に、肉牛の牧草肥育や穀物肥育に関する部門を代表する豪州肉牛協議会(CCA)、豪州フィードロット協会(ALFA)、食肉処理加工業者や輸出業者などで構成される豪州食肉産業協議会(AMIC)、独立した牛肉生産者および豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)から選出された計10名の委員により構成されている。

 

課徴金の引き上げは将来的な利益に

 BIFSC委員の一人である豪州加工協議会(APC:AMICの会員団体)のノーマン副会長は新聞取材に対し「今、1.5豪ドル(129円)の追加投資を行うことが、将来的に業界に対しての広い利益につながる」と述べ、肉牛取引課徴金の引き上げに理解を求めた。

 肉牛の取引時に課される肉牛取引課徴金については、第一次産業課徴金法により定められ、その使途は、MLAによる食肉の研究開発や販売促進の財源の一部として、また、豪州動物衛生協議会(AHA)の行う家畜疾病対策や全国残留物調査(NRS)に用いられている。しかし、その額は、1991年の6.25豪ドル(538円)を頂点に引き下げが続き、1996年8月以降、3.5豪ドルで据え置かれている。

 2003/04年度のMLAの決算報告によれば、牧草肥育牛および穀物肥育牛の取引により課せられた肉牛取引課徴金の総額は4,290万豪ドル(36億8,940万円)と、前年同期比8%の増加となっている。



肉牛生産者はおおむね賛成との見方

 今回の勧告について、業界団体の一部から根拠のない引き上げとして反対の声が出ている一方で、肉牛生産者については、おおむね賛成との見方が広がりつつある。主要肉牛生産地域を抱えるクイーンズランド州の現地紙などでは、「将来的な業界の発展につながるのであれば反対する理由はない」、「課徴金の引き上げは牛肉業界に還元される」などいずれも生産者の前向きな意見が目立っており、米国でのBSE発生に伴う豪州産牛肉輸出の拡大を受けて国内の肉牛価格が高値で推移する中、販売促進の強化によりさらなる輸出拡大を狙う肉牛生産者の強気の姿勢が背景に現れている。

 2002年には、今回と同様、販売促進による牛肉輸出の拡大を図るため、CCAなどの提案により1頭当たり4.0豪ドル(344円)への引き上げを狙ったが、当時、豪州全土を襲った干ばつでのコスト上昇に苦しむ生産者の反対を受けて、先送りの状態となっていた。

 BIFSCでは、今回の勧告内容について、肉牛生産者など関係者から広く意見を募るため、2005年5月下旬から6月初旬にかけて主要肉牛生産地域を対象に意見交換会を実施し、6月中旬から7月下旬までの間、勧告の内容の賛否を問う郵便投票を受け付けている。早ければ、8月中にも肉牛取引課徴金の引き上げについて結果が判明する。


元のページに戻る