長期化する鳥インフルエンザ   ● ベトナム


6月にも発生

 ベトナムでは2003年の末に北部のハタイ県と南部のメコンデルタで鳥インフルエンザが発生し全国的に拡大していった。これに対して政府は、殺処分による対策を実施し、2004年の3月末にはいったん、制圧宣言を行った。しかしながら、同年7月には再び発生が確認され、その後も散発的に発生した。今年7月初旬の国際獣疫事務局(OIE)への報告では、6月中旬にもメコンデルタのベントレ県で発生したことが確認されている。

  なお、ベトナム政府は2003年末から2004年3月にかけての発生を第一波とし、その後の発生を第二波としている。第一波では家きん全体の16.8%に相当する4,390万羽が死亡または殺処分されており、鳥インフルエンザの発生は全国61の県や都市のうちの57に及んでいる。第二波に関しては、2004年4月から2005年の2月までで35の県や都市で150万羽が死亡または殺処分されている。

 

続く人的被害

 世界保健機構(WHO)の取りまとめによると、6月28日までにベトナムでの鳥インフルエンザの罹患者が87人確認され、そのうち38人が死亡している。同様にタイでは17人の罹患者に対して12人が死亡し、カンボジアでは罹患者4名が全員死亡している。ベトナムの死亡率は他の発生国と比べて低いものの、人数が多く、昨年の暮れからの死者は罹患者60人に対して18人となっている。

  最近の傾向としては、感染世代の広がりや家族などの集団(クラスター)での発生が認められ、ウイルスの変異により、死亡率は低下したものの、人と人の間での感染性が高まったのではないかなどと懸念されているが、6月末現在、このことに関してWHOは、未確認であるとしている。

 

小規模生産者に課題

 同国では、約800万戸の農家が2億5千万羽の家きんを飼養しているとされるが、被害を受けた小規模生産者の飼養形態は、ほとんど鳥インフルエンザ発生以前と変わらない状況とされている。これは、殺処分によって失われた収入を取り戻すため、再度飼養を開始するものの、殺処分の補償金がわずかでしかないため、新しい施設を作ることができず、結局は家屋に隣接する庭や空地で放し飼いにするしか方法がないためと言われている。

 

家きん飼養の禁止対象都市を拡大

 農業・農村開発省は4月19日、鳥インフルエンザ対策の一環として、これまでベトナム南部のホーチミン市だけに適用していた、都市部での家きんの飼養禁止を、ハノイ、フエ、ダナンなどほかの14都市にも適用すると表明した。これは、人口集中地域から家きんを遠ざけることによって、人への感染の危険を避けるための措置としている。また、水鳥の放し飼いについても禁止するとしている。これらのほかに、ワクチンの強制接種を8月から実施し、10月上旬には発生の危険の高い地域にまで拡大したいとし、また、これに要する経費の630万ドル(6億7,410万円:1ドル=107円)は国庫が負担するとしている。


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