2003年12月の確認に次ぎ
2例目
ジョハンズ米農務長官は6月24日、英国ウェイブリッジにある獣医研究機関から、BSE確認検査を行っていた牛について陽性との最終結果を得たと公表した。
米国内でBSEの感染が確認されたのは、2003年12月に確認された患畜に次ぎ2例目となる。
当該牛は、米国がBSE対策のため牛など反すう家畜に対してほ乳動物由来の飼料給与を禁止した1997年夏以前に生まれたものとされている。ダウナー症状を呈し、2004年11月のスクリーニング検査の結果疑陽性とされ、免疫組織化学検査(IHC)の結果からBSE陰性との確定診断が行われていた。しかし、その後新たにウエスタンブロット法(WB)による検査を行ったところ、弱い陽性反応が得られた。米国農務省(USDA)は、国際獣疫事務局(OIE)が確定診断法としているIHCとWBの2つの検査結果において相反する結果が得られたため、当該牛の脳サンプルを英国ウェイブリッジの研究機関に送った。当該研究機関では、スクリーニング検査、IHC、WBによる確定診断が行われるとともに、USDAにおいても追加的な検査が実施されていた。
また、USDAは6月29日、当該牛が生産されたと考えられていたテキサス州の牛群の2頭と当該牛の間で、DNA分析により直接関係が確認されたと公表した。当該牛群の飼養者によると今回の陽性牛は約12歳とされている。当該牛群は移動制限がかけられ疫学調査が継続中である。
なお、今回の追加検査実施を勧告した同省の監察官事務所(OIG)によるBSEサーベイランスプログラムに対する調査は引き続き実施され、最終調査報告書は今夏の終わりごろまでには完成するとされている。
BSE確認検査の見直しを示唆
同長官は今回の検査結果を受け、(1)IHCとWBの双方がBSE確認検査として行われることが世界的な傾向として浸透していること、(2)米国における牛群が健康であるという確信を増幅させる必要があること−から、今後、WBによる確認検査も取り入れていくと述べた。
また、USDAの科学者に対し、国際的な専門家とともに、未確定なBSEスクリーニング検査の結果に対して実施されている両確認検査を包括するための新たなBSE検査実施要綱の検討を指示した。
なお、USDAのクリフォード主席獣医師は、(1)同省が実施しているBSEサーベイランスについて、スクリーニング検査における疑陽性例はこれまで3例のみしか得られておらず、また、IHCにより確定診断を実施したのもこの3例に過ぎないため、今回の結果が同省によるサーベイランスの結果を否定するものではない、(2)USDA連邦獣医局検査施設の担当者が持参したIHCの標本について英国の専門家も陰性との診断を支持した―とした。
各畜産団体は一様に冷静な反応
また同日、米国の各畜産団体もBSE患畜確認の公表に対しコメントを発表した。一様に、国内におけるBSE対策は既に機能しているため、BSEまん延の可能性は極めて低いなどと、今回のBSE患畜確認を冷静に受け止めている。概要は以下のとおり。
○NCBA
全国肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、BSE検査体制の再検討というジョハンズ米農務長官の勧告および政策を支持する。厳しい検査を経験した今回のサンプルを記憶しておくことこそが、今回の最終診断以上に重要なことである。本件が牛肉貿易再開に向け継続中の議論へ影響を及ぼすべきではないとのメッセージが貿易相手国に対し送られるようUSDAに強く要請していくとしている。
○R-Calf
米国牧場主・肉用牛生産者行動法律財団(R-Calf)は、ブッシュ政権と議会に対し、USDA、米国食品医薬品局(FDA)および米国保健社会福祉省(HHS)を管理するとともに、(1)BSE検査の拡充、(2)パッカーによる自主的BSE検査の容認、(3)飼料規制のさらなる強化、(4)BSE発生国からの輸入規制の継続−などを採用しBSE対策をさらに強化するよう訴えた。また、USDAは、カナダ産肉牛の輸入再開など米国の輸入基準を低減する措置を求めているが、今後米国が牛肉貿易の再開を望むのなら、同基準を低減するのではなくむしろ強化し、米国がBSE対策を適切に実施していることを証明しなければならないとしている。
○AMI
欧州でのBSE発生に際しては、人へ感染が広がるなど多くの混乱を伴った。アメリカ食肉協会(AMI)のボイル会長は、「欧州の人々は感染牛の脳などをリスクの暴露を知らずに食していたが、米国ではこれとは対照的に人へ危険を及ぼす部位はすべて除去され、人へ供給される食物からは排除されており両者には明確な差がある」と米国産牛肉の安全性を強調した。
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