生産・価格とも安定的に推移


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 3月以降、生産および価格は安定的に推移 ● ● ●

 タイ農業協同組合省発表の7月のブロイラー生産量(出荷羽数)は、6千4百万羽と前年同月を7.1%下回ったものの、昨年11月の底から回復した3月以降の生産量はほぼ6千万羽で推移している。また、生産の基礎となるひなのふ化羽数も3月以降は6千1百万羽から6千3百万羽で推移している。この理由の一つには、輸出の増加を背景に加工品の生産量が増加傾向で推移していることが挙げられる。

 また、商務省発表のバンコク市場のブロイラー生体卸売価格も3月以降キログラム当り30バーツ(90円:1バーツ=3円)から32バーツ(96円)の間で、安定的に推移している。

ひなふ化羽数

資料:タイ農業協同組合省農業経済局


● ● ● 大手が鶏肉調製品生産能力を拡充● ● ●

 鶏肉調製品輸出企業の大手であるチャロンポカパンフーズ社(CPF)とベタグロ社が生産能力を拡充していることが伝えられている。

 CPF社は、現在稼動させているバンコク市とサラブリ県の鶏肉調製品製造工場のほかにナコンラチャシマ県に工場を建設したが、この工場での生産能力を今年の年末までに月間5千トンになるよう引上げ、全社で月間の生産量を1万トンにするとし、日本側の承認を今年の3月に得ている。また、ベタグロ社も日本の企業と提携し、現在の鶏肉調製品の年間生産能力の4万トンを今年の第4四半期までに7万トンに引き上げるとし、関連プラントは今年1月に日本側の承認を得ている。

 両者は拡大した生産量を日本とEUの市場を中心に輸出するとしており、日本とのEPA発効による関税引き下げへの期待や、世界的な鳥インフルエンザの発生状況などが同国の鶏肉調製品の生産意欲を刺激している。


● ● ● 鳥インフルエンザ第三波の発生 ● ● ●

 タイにおいて、鳥インフルエンザが最初に確認されたのは2004年の1月下旬であった。その後、一旦は政府により終息宣言がなされたものの、2004年の7月に再発生し、その後も散発的に発生報告がなされてきた。

 2004年までの同疾病による死者の人数は12人となっていた。2005年に入ってからは9月まで死亡報告はなかったが、10月中旬にカンチャナブリ県で48歳の男性の死亡が確認された。

 10月下旬時点の発生状況は、カンチャナブリやスパンブリなどタイ中央平原を中心に5県で鳥インフルエンザの発生が確認されるとともに、他に34県が検疫当局の監視下に置かれており、全国の半数以上の県で発生の可能性があるとされている。タイ政府からOIE(国際獣疫事務局)への報告でも、最近の一連の増加する発生状況を「第三波」と表現され、周期として認識されている。

 死亡患者の発生により新聞などの報道機関はややセンセーショナルに扱ってはいるものの、これまで第一波と第二波を経験してきたことにより、タイの鶏肉産業は、輸出の主力を冷凍鶏肉から加熱済調製品に変更するなどの措置を進めており、事態が急激に悪化しない限り、輸出向け鶏肉需給の大きな変動要因にはならないと見られている。


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