インフレ対策のため乳製品の輸出税を引き上げ
アルゼンチン経済生産省は7月22日、決議第406/2005号(7月25日公布)により、乳製品に係る輸出税の引き上げを決定した。
アルゼンチン政府はインフレを抑制するため、生活基本食料品の値下げについて、3月から各業界団体と交渉し、3月15日に牛肉の、同17日には鶏肉の、そして同22日には乳製品の小売価格を150日間下げることが合意された(「畜産の情報海外編」2005年5月号p21〜22参照)。
しかし、6月下旬から7月上旬にかけて乳業メーカー側が「3月の合意価格を維持することは困難である」としたため、政府は「価格を維持しないのであれば、国内供給量を増加させるため輸出税を引き上げる」とした。これに対して乳業部門にかかわる関係者全体で対応方針が検討されたが、最終的には政府と合意することができなかった。
このため上記決議により、
(1)官報公布日から180日間
(2)従来の輸出税5%に代わり10または15%を課税
(3)期間終了後には元の輸出税に戻す
(4)公布90日後に国際価格の状況を勘案して見直しもあり得る−との内容で施行された。
なお現地では、小売価格について再交渉が始まるとされる牛肉や鶏肉部門などに対する警告として、輸出税の引き上げが実施されたとの報道もあった。
輸出税で創設された基金は生乳生産の増加助成に
その後生産者側から「輸出税の引き上げにより生乳取引価格が引き下げられ(5%下がったという報道がある)、問題が生じている」などの不満の声が上がっていたため、10月5日SAGPyAは「政府は乳製品の輸出税で得られた基金の使途を決定」というプレスリリースを発表した。
これによれば、連邦乳業委員会を構成するSAGPyAと酪農生産5州の生産大臣が会談し、生産部門や輸出部門などの意見を考慮して合意された案として、
(1)当該輸出税により創設された基金の85%を生産部門に還元
(2)その使途目的を搾乳や生乳の冷却保存を改善するための機械設備の導入、牧草のは種、妊娠牛の購入または保留、インフラ整備などに対して投資した生産者への利子助成
(3)残り15%は、衛生計画への支援、酪農乳業部門の構造的問題の研究−に充てられるとした。
生活基本食料品のうち牛乳・粉乳類の価格の推移
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輸出は引き続き好調
11月9日アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)が公表した牛乳・乳製品の輸出実績は、1〜9月において輸出量が前年同期比13.5%増の203,811トン、輸出額が同24.7%増の4億4,454万ドル(520億円:1ドル=117円)で、分類別の輸出実績は以下のとおりになった。このうち輸出量の7割弱を占める牛乳・粉乳類は、1〜3月において19,000〜20,000トンを輸出していたが、4〜9月には12,000〜13,000トン(ただし、8月は16,000トン)で推移しているところから、輸出税を上げた影響が輸出量に及ぼしているかは不明である。
なお、生活基本食料品のうち牛乳と脱脂粉乳の価格の推移を下記に示したが、今のところ8〜10月は安定して推移しているようである。
アルゼンチンの牛乳・乳製品の輸出量および輸出額(1〜9月)
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