豪州、BSEに関する政策の見直しをめぐる動き


検討の用意も早急な見直し決定は否定

 肉牛生産者団体が求めていた豪州の食品安全政策の見直しについて、豪州連邦政府のマクゴーラン農相は9月末、肉牛生産者団体の要請に応えるためには、BSE発生が確認または影響が懸念される国々からの牛肉輸入を禁止した豪州のBSEに関する規制の改定が必要と述べ、WTO新多角的貿易交渉(新ラウンド)の状況によっては、緩和を含めて検討する用意があることを明らかにした。

 ただし、同農相は、豪州のバイオセキュリティー政策などに与える影響を考慮し、連邦政府はBSEに関する規制の改正や食品安全政策の見直しを決定したのではなく、また、これに関する検討時期、目標を設定していないとして、早急な緩和実施への期待を打ち消した。


団体、科学的根拠に基づく適切な判断を要求

 肉牛生産者などで組織する豪州肉牛協議会(CCA)によると、現在の食品安全政策では、万が一、豪州でBSE感染牛が1頭でも確認された場合、国内に流通するすべての牛肉は店頭から撤去しなければならないとしている。また、CCAでは、BSEの発生により、必然的に海外市場から豪州産牛肉が締め出され、結果的に牛肉は市場を失い、国内の牛肉産業は壊滅的な被害を受けるとして、食品の安全性は絶対条件であるが、食品安全政策の順守には科学的根拠に基づいた判断が適切に行われる必要があるとしている。

 BSE未発生国である豪州では、“クリーンでグリーン”なイメージを畜産物などの輸出戦略に掲げており、厳しい検疫体制やバイオセキュリティー政策などが執られている。


貿易相、規制緩和は検疫制度崩壊と懸念

 連邦政府のベール貿易相(副首相兼務)は10月10日、新聞取材に対してBSEに関する規制が緩和されると、高度に維持されている豪州の検疫制度の崩壊につながるとの懸念を示した上で、豪州の貿易政策の弱体化にも関連することから、連邦政府内部で緩和を含めた規制の検討自体が間違いであると述べた。また、この問題を慎重に対処しなければ、豪州の検疫システムは徐々にむしばまれるとして、牛肉生産者らの危ぐは認識するとしながらも、検疫システムの重要性を訴えた。


農相、政策や検疫水準の維持の必要性を強調

 マクゴーラン農相は10月10日に開催された連邦議会の席で、豪州の検疫体制は、引き続き堅固に維持されるとの答弁を行った。これは、高い検疫水準により優位性を持つ豪州の牛肉産業が、BSEに関する規制の緩和を含む政策の見直しにより、2005年1月に発効した米国との自由貿易協定(FTA)で保持されるとした現行の検疫システムまでが引き下げられ、豪州の牛肉産業はその地位を失うのではとの質問に答えたもの。同農相は、BSEに関する規制緩和問題を念頭に置いた上で、FTAに関する豪州の方針に変更はなく、また、質問内容がFTAにより豪州の検疫およびバイオセキュリティー体制が弱体化するとの異なった見方に立ったものだと批判し、連邦政府は全力を上げて検疫体制やその安全性の維持、食品基準の安全性確保に努めると述べ、BSEに関する規制とは別の次元で現状の検疫体制は維持することを強調した。

 連邦政府が早急な緩和実施を否定する中で、国内の報道機関各社は、同農相が9月末に行った発言を受けて、一斉に「BSE規制の改正に前向き」との報道を続けており、関係者はその火消しに躍起となっている。



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