渡り鳥監視の強化を指示
フィリピン農務長官は9月、例年第4四半期(10〜12月)に北方からの渡り鳥が多く飛来することから、鳥インフルエンザ対策として、特にこの時期の渡り鳥の監視強化を行うとした。同長官によると渡り鳥の主な飛来地20カ所においてサーベイランス調査を実施したところ、現在感染は確認されてないとしている。
これに関連して、国連食糧農業機関(FAO)は9月1日、野生水鳥の渡りが鳥インフルエンザのまん延を引き起こしており、現在ロシアおよび中国で感染が拡大している主な要因であるとして警戒を呼びかけていた。
同国では7月に、マニラ北東の家きん農場で飼養されるアヒルから血清亜型H5陽性が疑われる検査結果が報告されたものの、その後、国際獣疫事務局(OIE)が推薦する検査機関である豪州動物衛生検査所の再検査によりこれが否定され、国内検査機関による検査の信頼性が疑われている。このような状況の中で、現在日本向け家きんおよび家きん肉の輸出は停止している。
同国政府はこの発生農場に関して、半径3キロメートルの検疫区域を設け、この区域内での家きん類の移動制限措置をとったほか、家きん類の販売、闘鶏の開催についても禁止したとしている。
日本産家きんなどの輸入を停止
一方、わが国でも茨城県などにおいて血清亜型H5N2の低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)がサーベイランス調査で確認され、OIEに8月23日までに報告された内容を受けて、同国は9月20日、9月12日付け農務長官通達(M.O.No18)により緊急措置として日本産家きんなどの輸入に関する事務手続きの停止措置をとることとした。対象品目は家きん、野鳥およびそれらの製品とされ、初生ひな、卵および精液を含むとされた。
なお、アセアン地域における日本産家きんなどの輸入制限措置としては、今回のフィリピンによる措置のほかに、シンガポールが6月に発生地域産に限定して鳥、家きんおよびそれらの製品の輸入停止を通知している。
家きん産業の現状
同国農務省農業統計局の発表によると、2005年1月1日現在の家きん飼養羽数(速報値)は1億3,600万羽で、前年比で11.5%の伸びを示しており、うち54%は庭先養鶏の地鶏などが7,400万羽、ブロイラーは30%の4千万羽、採卵鶏が16%の2,200万羽とされた。ブロイラー飼養羽数は前年比28%、採卵鶏は同22%の大幅な伸びを示している。ブロイラーの飼養地域はルソン島中部に集中しており、全国の42%を占めているのが特徴である。なお同地域の採卵鶏飼養羽数は17%である。
ブロイラー、採卵鶏ともに種鶏を全量輸入しており、これらの輸入状況は年によりばらつきが見られる。2004年のブロイラーGP鶏(初生ひな)輸入は22万6千羽で前年比44%の大幅な減少を示しており、同様にPS鶏についても26万2千羽で同62%の減少となっている。一方採卵鶏のPSは36万8千羽で前年比29%の増加となっている。種卵(PS)輸入は合計約20万個と前年比で67%減少している。
同国の2004年の鶏肉生産量は65万8千トンで、前年比3.6%増加している。一方同年の鶏肉輸入量は2万1千トンで供給量全体の3%を占めている。輸入量は前年比51%増と大幅に増加している。
従来、同国の鶏肉輸出は20トン程度と極めて少なかったものの、2004年はアジア各国などでAIが大流行する中、同国のみ清浄性を保っていたことから輸出が極端に増加した。同年の輸出量1,237トンは大部分が日本向けに輸出された。
また、同年の鶏卵生産量は29万7千トン、前年比で8%増加した一方、輸入は同73%減の101トンとなった。なお鶏卵・鶏卵加工品の輸出は行っていない。
|