祭日シーズンを迎え価格監視強化 ● マレーシア


フェスティバルシーズンの到来

 マレーシアの人口構成は、マレー系が66%、中国系26%、インド系などが8%となっており、各民族の宗教ごとに祭日が設定されている。今年の暦では、11月1日がヒンズー教の祭典であるディーパパリ、10月から始まり1カ月間続いたイスラム教の断食が終了して祝う11月3日が断食明け(ハリラヤ・アプサ)、その後、クリスマス、太陽暦の正月、そして太陰暦による2月の中国正月までフェスティバルシーズンが続く。

 この期間には祭りを祝って親戚などで会食を行うなど、食料品の需要が高まるので、これに乗じて不正に価格を引き上げる業者が出ないよう、同国の国内取引・消費者省は1946年物価統制法に基づいて特定食糧品の価格の監視を行っており、違反に対しては罰則がある。

 昨年までは、11月の断食明け前後の期間と越年後の中国正月を中心とした期間を分けて監視期間を設定していたが、今回は10月15日から2006年の2月末までの4カ月半の長期にわたる設定となっている。


価格監視対象品目は地域別に設定

 価格の監視対象となる品目は、鶏肉、牛肉、羊肉、卵などの畜産物のほか、魚や野菜などであり、今回、水産物のエビなどが追加され、昨年の17品目から23品目に増加した。統制上の上限価格の設定は、全国一律ではなく、郡ごとの設定となっており、畜産物価格に関しては、ボルネオ島にある東マレーシアは半島部に比べて価格が高く、その一方で水産物の価格が低く設定してある。これは輸送費などの格差によるものとされ、例えば、インド産輸入水牛肉の価格は、首都のクアラルンプールではキログラム当り7.5リンギ(233円:1リンギ=31円)であるのに対して、産地から遠いボルネオ島のクチンでは10リンギ(310円)となっている。一方、エビでは、キログラム当り26〜40匹のものが同50リンギ(1,550円)とクチンの35リンギ(1,085円)に比べて逆転している。


鶏卵などの上限価格を引き上げ

 また、クアラルンプールでの昨年と今年の畜産物の上限価格を比較すると、キログラム当り、鶏肉(丸鳥:一部内臓付き)が6リンギ(186円)、国産羊肉が23リンギ(713円)で昨年同であり、国産骨付き牛肉が17リンギ(527円)から18リンギ(558円)へ、輸入骨なし羊肉が15リンギ(465円)が16リンギ(496円)に上昇している。

 特に鶏卵は、卵重による規格のグレードA〜Cで、1個当たり4セン(1リンギ=100セン:1.2円)から8セン(2.4円)昨年に比べて引上げており、同国では鳥インフルエンザの終息宣言を行っているものの、供給の回復が十分でないことが伺える上限価格の設定となっている。


監視対象外の豚肉の高値に警戒感

 同国の人口の約4分の1を占める中国系の人々が好む豚肉は監視の対象から除外されているが、このことについては、同国はイスラム教を国教としており、豚肉が忌避の対象になっているためと考えられている。

 豚の生産者販売価格は、昨年9月に生体100キログラム当り477リンギ(14,787円)だったが、その後上昇を続け、今年の7月と8月には600リンギ(18,600円)にまで上昇した。

 このため、主要生産地であるペラ州とマラッカ州の一部有力流通業者は原料豚の買い入れを2〜3日間中止したとされている。その後、全国ベースで生産者側と流通業者側の取引価格に関しての交渉が持たれ、9月以降の生産者価格は570リンギ(17,670円)台で推移している。それでも昨年9月からの上昇率は約2割となっている。

 また、この間にEUから約1,000トンの豚肉が輸入され、国内市場に供給されたとしており、生産者側は政府にこれ以上の輸入を認めないよう要請するとともに、生産者価格の上昇の影響に警戒を強めている。


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