豪州国内における生乳の仕向け傾向


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 国内では2つの仕向け傾向が顕在化 ● ● ●

 生乳生産の8割近くが加工用に仕向けられる豪州だが、その仕向け傾向は州別にみると異なっている。

豪州農業資源経済局(ABARE)がこのほど発表した豪州酪農産業に関する最新報告によると、生乳生産の仕向け傾向は、(1)飲用向け、加工向けに仕向けられるタイプ、(2)圧倒的に加工向けに仕向けられるタイプとがあり、前者はニューサウスウェーズ州(NSW)、クイーンズランド州(QLD)、西オーストラリア州(WA)、後者はビクトリア州(VIC)、タスマニア州(TAS)、南オーストラリア州(SA)に分類されている。

 ABAREによると、シドニー、ブリスベンなど大消費地が立地するNSW州、QLD州は、輸送効率や品質保持の必要性から、大都市近郊に飲用乳工場が集中しており、そのため、飲用向けに仕向けられる割合が比較的大きくなっている。一方、VIC州、TAS州では、生乳生産が豪州全体の6割を占め、州内で飲用乳として消費し切れないことから、豪州全体で半数近い加工工場が州内に立地しており、圧倒的に加工向けの割合が突出している。またSA州については、交通インフラの発達などにより、VIC州の加工工場へ仕向けられる割合が多くなっている。

図 各州における生乳仕向け先の構成比
資料:デイリー・オーストラリア調べ

● ● ● 国際市場の影響を受けやすいVIC州 ● ● ●

 VIC州は、加工向け生乳に占める輸出向けの割合が、60%を占めるなど、他州と比較して、国際市場の影響を受けやすい。その影響は、生産者が受け取る生乳価格に現れており、2002/03年度のデータで比較すると、NSW州やQLD州など国内市場が近接する地域の生乳価格が全国平均を5〜7豪セント(約4〜6円、1豪ドル=83円)上回るのに対して、VIC州は1〜2豪セント(約1〜2円)下回っている(デイリー・オーストラリア調べ)。前年度で比較してみても、NSW州、QLD州がそれぞれ0.9%、0.8%とわずかに上昇しているのに対して、VIC州は、豪ドル高の影響で25.5%下落している。

表 各州における生乳の乳固形分量
                                              (単位:キログラム)
                               ※ 100リットル換算


● ● ● 乳固形分ではVIC州が優位 ● ● ●

 これらの地域を乳脂肪、乳たんぱく質など乳固形分で見ると、VIC州が全国平均を上回っている。デイリー・オーストラリアの調べによると、VIC州の乳脂肪は、全国平均が生乳100リットル当たり4.10キログラムに対し、4.15キログラム、乳たんぱく質が、全国平均が生乳100リットル当たり3.25キログラムに対し、3.28キログラム、1〜5%の割合でそれぞれ全国平均を上回っている。

 一般に乳製品向けとして乳固形分が上昇すると生産者価格が上昇することから、VIC州の乳固形分は上昇を続けており、ABAREによると、今後ともVIC州は、生乳の有力な最終仕向け先である加工乳生産の分野で優位性を保ち続けるとしている。


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