EU拡大により、2004年EU25カ国の農業収入は前年比3.3%増


農業収入、新規加盟国では前年比53.8%増

 EU統計局(EUROSTAT)は先頃、2004年の農業収入見込み(暫定値)を公表した。これによると同年におけるEU25カ国全体の農業者1人当たりの農業収入は(実質。以下同じ)は、前年比3.3%増であったと推定されている。増加の要因は、第一に昨年5月に新たにEUに加盟した10カ国(NMS)が、EUという単一の大市場に参入したこと、共通農業政策(CAP)の実施で補助金の受け取りが増加したことから、農業収入が同53.8%増加したことが寄与している。なお、旧加盟15カ国(EU15)での農業収入は、同0.8%増であった。

 加盟国別に見ると、19カ国で増加し、6カ国で減少した。NMSのほとんどの国において増加し、特にチェコ(同107.8%増)、ポーランド(同73.5%増)、エストニア(同55.9%増)などで非常に高い伸びを見せた。またEU15では、ドイツ(同16.6%増)、デンマーク(同12.2%増)、ルクセンブルク(同7.8%増)でも高い伸びを見せた。一方、オランダ(同11.5%減)、ベルギー(同8.8%減)では大きく減少した。

鶏の生産量が増加、豚の生産者価格が大きく上昇

 農産物生産額は、畜産物が同0.7%、耕種作物が同3.1%とともに増加し、全体では同2.0%増となった。

 畜産物は、畜産物全体の生産量では同0.4%増、生産者価格(実質。以下同じ)は畜産物全体で同0.4%安とほぼ前年並みであったが、品目別に見ると、家きん肉の生産量が同4.6%、豚肉の生産者価格が同6.9%とともに大きく増加した。

 家きん肉の生産量は、ポーランド、バルト3国での生産量が特に増加した。これは、EU拡大により、EU15への輸出制限がなくなったこと、安価な卸売価格によるものであると考えられる。なお、家きん肉の生産者価格は、ポーランドを除くすべての加盟国で生産量の増加により、下落した。

生乳の生産者価格は2.8%下落、牛肉は0.5%上昇

 農業生産額に占める割合が最も大きい生乳では、生産量は前年と比べわずかに減少(0.7%)し、生産者価格もポーランドとバルト3国を除き前年を下回り、全体では同2.8%安となった。

 肉牛に関しては、生産量は、前年に比べ減少(同0.4%)となったが、生産者価格は、前年に比べわずかな上昇(同0.5%)ではあるが、この2年間でBSEおよび口蹄疫(FMD)の影響からは回復したものとなっている。

耕種作物、最適な気候で生産量増加

 耕種作物に関しては、2004年は、年間を通じ最適の気候であったことから生産も良好であり、生産量は猛暑のため生産が減少した2003年に比べ前年比12.5%と大きく増加した。一方、生産者価格は、全体で同8.0%下落したが、生産量の増加により、耕種作物の生産額は、同3.1%上昇した。

NMSへの補助金増加

 欧州委員会農業総局によると、NMSの増加理由に、CAPの実施を挙げている。NMSへの農業分野への補助金は、2003年の12億ユーロ(約1,716億円:1ユーロ=143円)から、2004年には30億ユーロ(約4,140億円)となったと伝えている。

 NMSでの農業収入の増加が顕著となっているが、EU15でも長期的に見ると増加傾向となっており、1980年と比べると約48%増加、CAP改革が行われた1992年と比べても約24%の増加となっている。


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