豪・米間およびNZ・中国間などのFTA交渉前進へ


豪米間のFTA、2005年1月1日発効へ

 豪州およびニュージーランド(NZ)政府首脳は、11月中旬に開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議でチリを訪問中、懸案となっている自由貿易協定(FTA)に関して、それぞれ関係国の首脳と会談を行い、FTAの進展に一定の成果を得た。また、豪タイ間のFTA関連法案が豪州議会を通過し、豪タイFTAが正式に発効することとなった。

 APECに出席した豪州連邦政府のベール貿易相は11月18日、米国のゼーリック通商代表と会談した結果、豪米間の自由貿易協定(FTA)が、当初の予定通り2005年1月1日から発効することに最終的に合意したと発表した。

 豪米間のFTAについては、豪州側で今年8月、与党側がFTA関連法案について上院議会を通過させるために、野党側の要求を受け入れ、医薬品関連分野やTV番組の現地調達率の分野で修正を行った。これにより、特に医薬品関連分野での修正が米国側の反発を招き、発効の遅れが懸念されていた。

 ベール貿易相はこの発表に際して、改めて豪米間のFTAの重要性を訴えた。それによると、FTAによって97%以上の米国向け輸出品目がFTA発効当日から関税ゼロになり、「民間調査会社の評価を引用すると、このFTAによって60億豪ドル(4,980億円、1豪ドル=83円)の経済的利益と、3万人以上の新たな雇用が生まれる」と述べている。(なお、豪米FTAの概要については、「畜産の情報 海外編」5月号21ページ参照。)

豪タイFTAも2005年1月1日発効へ

 また、ベール貿易相は同日、豪タイ間のFTA関連法案が議会を通過したことを歓迎する声明を発表した。この法案の成立によって、2005年1月1日からの豪タイFTAの発効が決定した。ベール貿易相によると、初年度で約1億豪ドル(約83億円)以上の関税の削減が見込め、さらに、2010年までには現在の貿易品目の95%まで関税が撤廃される。さらに、豪タイFTAでは、特に農業分野での恩恵が大きいが、サービスや投資分野でも大きな利益が期待できるとしている。

トラス農相も「生産者にとってよい情報」と歓迎

 豪州連邦政府のトラス農相も11月18日、豪米および豪タイFTA発効の決定について、「生産者によい情報」であると歓迎の意向を表明した。

 トラス農相によると、豪米FTAについては、牛肉、バター、チーズ、粉乳、ワイン、海産物、ラム、ピーナツ、オレンジ、木材などの多くの一次産品の輸出増が期待できる。豪タイFTAについては、穀物、食肉、乳製品、野菜、加工食品、海産物、皮製品、ワインなどの輸出増が期待できるとしている。

NZ、中国がFTA交渉開始へ

 一方、同様にAPEC閣僚会議に出席していたNZのクラーク首相は11月19日、中国の胡国家主席との会談後、数週間内に中国と正式にFTA交渉を行うと述べた。

 NZ中国間のFTAについては、昨年10月から両国のFTA実施に関する研究会が共同で行われていたが、今般、この研究会で両国間のFTAが双方に有益であることが示された。

 NZは先進国の中で、中国とFTA交渉を行う最初の国である。他にクラーク首相は今回の会議に際して、チリ首脳とも経済協力関係構築のための会談を行っている。

中国との研究会の結果の概要は次のとおり。

・ FTAは両国に利益をもたらし、両国経済は発展する。

・ FTAによりNZの中国向け輸出は2007年から2027年までの20年間で、年2億6千万〜4億NZドル(198億〜304億円、1NZドル=76円)増加する見込み。これは、FTAを結ばない場合と比較して20〜39%増加となる。一方、中国側は5〜11%増加になる見込み。

・ 両国の経済間には相互補完関係があり、FTAを結ぶに当たって大きな障害はない。

・ 植物検疫や生乳生産者保護などの分野では問題の調整や交渉行うことを考慮する必要がある。

・ 交渉は出来るだけ早く、商品、サービス、投資分野全般にわたり行うーなど。


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