大幅な生産の減少
タイ採卵養鶏取引輸出業者協会(TLPTEA)によると、2004年の鶏卵生産量は、前年比28%減の66億個(約41万トン)になると見込まれている。これは、今年の初めに鳥インフルエンザが発生し、多くの採卵鶏が処分されたことが主な原因である。タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)が、第1次の発生沈静化後の6月初旬時点で発表した採卵鶏の処分羽数は、全家きん処分羽数6千万羽のうち、1千7百万羽となっており、3割も占めていた。
その後7月に再発し、直近では11月末にも発生が確認されたが、第1次の時と比較して散発的な発生になっている。
需給に大きな乱れ
鳥インフルエンザの発生は、生産のほかには、特に消費へ対する影響が大きいものとなっている。鶏卵に対するイメージの低下と価格の上昇により、国全体での消費量が89億個(約56万トン)から65億個(約41万トン)に、1人当たりにすると137個が100個へと3割減少すると見込まれている。
また、消費量が大幅に減少する背景には、鶏卵供給そのものの減少のほかに、飼料原料価格の上昇による生産コストの上昇もあり、1個当たりの農家販売価格が、昨年平均の1.4バーツ(3.6円:1バーツ2.6円)が、2004年平均では2バーツ(5.2円)と4割ほど上昇するとしており、結果的に鶏卵価格を押し上げたためである。
また、輸出についても、2002年に3千8百万個(約2,400トン)だったものが2003年には2億1千万個(約1万3千トン)まで増加したが、2004年には1億個(約6千トン)と前年から約5割の減少が見込まれている。拡大した輸出市場である香港(輸出量に占める割合が50%)やインドネシア(同30%)などの市場を今後中国、ドイツなどの競争相手に譲ることとなる。
鶏卵価格上昇の背景
鶏卵価格上昇の背景には、今年の気候が猛暑による産卵率の低下による鶏卵の供給そのもの減少のほか、鳥インフルエンザの発生により、発生した地域が監視地域となって鶏卵の移動制限措置が適用されることも原因となっている。この措置の結果、監視地域では鶏卵が過剰となるものの、消費の中心となる都市部では不足し、結果的に価格は上昇してしまうこととなった。
また、飼料原料価格も上昇したが、この原因の一つに、飼料取り扱い業者の見込み違いが上げられる、業者は、鳥インフルエンザ発生中は原料需要が減少すると見込み、トウモロコシと魚粉を必要以上に輸出してしまった。特にトウモロコシは、それまで5万トン前後だった輸出が3月から5月にかけて10万トンを超える輸出となった。その結果、11月までの平均では、トウモロコシ価格が2003年平均を16%、魚粉が14%上回っている。
なお、採卵鶏価格の上昇もコストの上昇要因として影響した。殺処分後の導入需要が集中し、その結果、政府が予定していた殺処分を行った生産者への補償価格である1羽当たり80〜90バーツ(208〜234円)を大きく超える140〜150バーツ(364〜390円)に採卵鶏価格が上昇した経緯がある。
このように需給の乱れなどによって鶏卵価格は上昇したが、主な原因となった鳥インフルエンザの終息の目途が立たないまま、年末を迎えている。
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