第3四半期は養豚・養鶏部門で減速
フィリピン農務省農業統計局(BAS)が11月15日発表した2004年第3四半期の農業統計によると、同国農業部門(水産含む)全体の生産額は前年同期比6.82%増の成長を示している。
家きんを合わせた畜産部門の農業生産額全体に占める割合は29%となっており、昨年同期の成長率に比べると堅調な推移となった。家きんを除く畜産部門全体の生産額は前年同期比0.5%増で、基幹部門である養豚の成長率は4.3%から0.7%となり、家きんでは全体で成長率3.0%、養鶏部門の成長率は3.9%から1.8%へとわずかに低下している。
新内閣の農業政策は所得向上に軸足
第2次アロヨ内閣の掲げる農業振興策は、流通効率改善のための道路などやかんがい施設などの基本インフラ整備をはじめとした従来の低所得者層の所得向上対策を中心としつつ、新農務長官は前長官同様、一方で産業としての生産振興策を掲げている。
畜産関連では以下の対策などを実施するとしている。
○トウモロコシの自給達成
新内閣の100日政策の中で、遺伝改良種トウモロコシの作付け面積を現行の8万5千ヘクタールから17万ヘクタールへ増加することでトウモロコシの自給を目指し、飼料の安定供給につなげる。この目標達成のために取引価格が低調なサトウキビからの転作を促すなどを実施するとしている。
○生産経費削減対策
農務省は11月初旬、農産物の生産経費削減対策を発表とした。飼料生産費削減のために流通費用の削減を図ることを目的とし輸送の効率化、検問所の統廃合、関連法改正などの対策を行うとし、また、飼料用トウモロコシ価格削減対策、獣医師料および医薬品経費削減のため、出血性敗血症や口蹄疫などの家畜疾病対策の強化を行うとした。
○鶏卵生産振興
農務省は11月10日、業界団体であるフィリピン卵業協会との間で、国内の鶏卵消費拡大を図り安価なタンパク源として国民の栄養改善に資することで合意した。同協会代表は卵の国内消費が1人当たり年間52個程度と周辺国に比べて低レベルであり、重量換算による取引も一般的でないとして流通システムの改善を求めた。政府は国内消費を少なくとも年間20個以上拡大したいとしているが具体策はまだ示されていない。
◎フィリピンの鶏肉需給の状況
11月20〜21日のAPEC閣僚会合での実質合意に至ったとされる日本とのFTAに関する協議の中では、一部鶏肉に対する低関税輸入枠が段階的に設定される予定とされている。
統計局(NSO)が公表した2003年輸出入統計によると、同国から輸出された鶏肉は冷凍丸鳥が28.8トン(FOB価格による平均単価は1キログラム当たり約77ペソ(154円:1ペソ=2円))、同じく冷凍くず肉0.5トンがともに全量日本向けで、その他空輸による調製品7.7トンが主に香港に輸出されたのみとされている。
一方同年の輸入状況としては、冷凍丸鳥が615トン(同28ペソ(56円))米国を中心にカナダ、ブラジル、中国から、冷凍部分肉1万3,460トン(同27ペソ(54円))が同じく米国、カナダを中心に輸入されている。そのほか、調製品やくず肉などが各国から合計約488トン輸入された。また、わずかに香港産生鮮(冷蔵)丸鳥の輸入があった。
なおBAS発表による同国の2002年ブロイラー生産量は62万7千トンとされている。
農務省畜産局(BAI)は9月中旬現在で日本向け鶏肉輸出量は全体で500トンを上回ったとされ、同国で鳥インフルエンザが未発生であることが日本をはじめ周辺国への鶏肉や初生ひなの輸出機会を増大しているとして、この分野での今後の輸出拡大に期待感を表明している。
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